2018年から変わるオンタリオ州の労働法

文・空野優子

2017年5月の記事でオンタリオ州の労働基準法と労働組合に関する法律の改正が審議されていることを書いたが、この法案は2017年11月27日にBill 148, The Fair Workplaces, Better Jobs Actとして成立した。

最低賃金が上がることに注目が集まっているが、この法律はもともと、契約労働、派遣労働の増加などの働く環境の変化に伴い、今の時代に即した改正を目的としており、最低賃金以外にも、多くの働く人にとって朗報となる規定が盛り込まれている。以下、その主な内容をみていきたい。なお、この法律で定められる改訂基準は2018年1月以降、段階的に施行されることになっている。

労働法改善を求める人達(CBCニュースより)

2018年1月1日より施行の主な改正点

  • 一般最低賃金が時給11・6ドルから上がって時給14ドルに。(18歳未満の学生の最低賃金は15ドル、お酒の飲めるレストラン、バーのサーバーは12.2ドル)
  • ほぼ全ての労働者にとって年10日までの病休が権利となる(正式にはPersonal Emergency Leave と呼ばれ、働く本人の病気だけでなく、家族の病気、そのほか緊急時に取ることができる)。最初の2日は有給で残りは無給。今までの法律では、この権利は中規模以上(従業員が50名以上)の職場で働く人にのみ認められており、病気になっても休みを取ることができない人が多くいた。また、病休を取るのに、雇い主が医師の診断書を求めることは今後禁止される。
  • 同じ雇用先での勤務5年以上で、有給が年15日に(5年未満は今までと同じ年10日の休暇)。
  • DV(ドメスティックバイオレンス)や性暴力の被害者に対し、病休とは別の休業補償。

また、レストラン勤務労働者に対するドレスコード等でハイヒールの靴の着用を求めることも原則禁止される。

2018年4月1日より施行の主な改正点:

  • フルタイム、パートタイム、契約、派遣などの雇用形態に関わらず、主な職務内容が同じ仕事には、原則同一賃金を義務付け(equal pay for equal work)。今までは、たとえ同じ職務をこなしてもフルタイムの従業員に比べてパートタイムの労働者の賃金が抑えられることが多く、加えて、パートで働く人は女性や移民、非白人の率が高いため、格差解消の視点からも改善が求められていた。ただ、一般的に賃金は非公開のことが多いので、周りと自分の給料の差がわからず、働く側としては実際権利を行使するのは難しいという指摘もある。

2019年1月1日より施行:

  • 一般最低賃金が時給15ドルに。
  • シフト制のスケジュールに関する最低基準の設定。フルタイムの仕事を念頭に作られた前の法律には、シフト制に関する規制が全くなく、サービス業などに従事する人は、働くスケジュールが前もってわからない、直前にシフトがキャンセルされる、などの不都合が問題になっていた。今回の改正で、前もって予定されていないシフトは断ることができる、直前にキャンセルされたシフトには最低3時間分の時給が支払われる、などの規定が盛り込まれた。

以上のように、今回の新法は、多くの労働者、特にパートなどの非正規で働く人の権利が強められる内容となっている。裏を返せば、90年代から続いた前の法律が、大幅に変わった労働環境の現実にようやく少し追いついたともいえる。

2018年、働く人とその家族にとってよりよい年となりますように。

 

*この記事は、主にワーカズアクションセンター(http://workersactioncentre.org/ontario-workers-get-new-rights/)、CBCニュース(http://www.cbc.ca/news/canada/toronto/sweeping-workplace-changes-january-1-1.4467024)などを参考に書かれた。