世界女性会議に参加して――障害と女性について」 by 中川志保子 (2011年10月)
2011年7月3日から7日まで、オタワ大学で世界女性会議(Women’s Worlds: WW)が開催され、初参加してきました。正直なところ、最近学会に飽きてきていた私は、WWにも期待はあまりなく、自分の報告パネルのみ参加して、後は差し迫った他の仕事でも宿でこなそうと思っていました。
しかし、ふたを開けてみれば、多くの人に出会うことができ、さらに彼女たちとの会話が大変刺激的で、出るパネル全て興味深く、気づけばできるだけ多くのパネルに参加しようとしている自分がいました。
WWは、国連主催で女性の地位向上を目的に1975年から5~10年ごとに世界各地で開かれている会議で、今回で第11回目となります。1995年の第4回北京会議では、女性の人権問題に取り組むための「北京行動綱領」が採択されました。
92カ国から2千人が参加した今回の会議では、女性差別に資する「サイクル、上限、バリア、そして地盤を破る」というテーマが300以上のパネルで議論され、またアートや文化的イベントも多数開催されました。
さらに、カナダ国内で行方不明かつ殺害された582人のアボリジナルの女性、少女たちを支援するための連帯マーチも行われ、国会前でこの問題を無視し続けるカナダ政府を糾弾するラリーが行われました。
私にとって、パネルや多くの人から色々なことを学ぶことのできたWWでしたが、とりわけ刺激的だったのが、障害と女性について取り組んだパネル、「将来的課題のための会議、またはパラダイム:私たちはそこにたどりついているのだろうか?障害に関するリーダーであるフェミニストたちとの対話」でした。
私自身も実は、最初からこのパネルを目当てにしていたわけではなく、初めに同じ時間帯のセックス・ワーク関連のパネルに行ったのですが、仏語で報告がなされていて翻訳もなかったので諦めて、その近くで行われていて面白そうだったこのパネルに偶然参加しました。
しかし、その内容は、いかに障害が主流のフェミニスト運動や議論の中で隅に追いやられ、そして、そのこと自体が障害のあるなしにかかわらずいかに女性や女性運動に影響しているのかについて問うものであり、私自身女性と障害というトピックの重要さを分かっていなかったことに気づかせてくれるものでした。
「障害」を障害として形作り、構築している社会と女性、そして女性差別がどのように関係しているのか、そして障害を持つ(持たせられている)女性が現在どこにいるのか、また障害を持つ女性だけでなく女性にとってのバリアとは何なのか、そのような問いが、様々な組織で長年、障害と女性の問題に取り組んできたパネリストたちによって具体的な事例とともに議論されました。
WW自体においても、会議で使ったメインのビルにエレベーターが二台しかないため常にエレベーターは混雑していて、車椅子を使う参加者が乗ることができないという事態が発生していました。これは、障害を扱うパネルにあまり参加者が集まらなかったということと無関係ではないはずです。フェミニストとしてこれからもっと障害について考えていきたいと思っています。
大変充実したWWでしたが、日本から参加していた古くからの友人と、夜カフェでお茶できたのが一番嬉しかったです。また、日本人女性の参加者の方たちがパネルやポスター報告等の応援にいらして下さったのも有難かったです。
そして素敵なパネルに呼んでいただき、お世話していただいた、岡野八代先生、牟田和恵先生、鈴木彩加さんに大変感謝しています。
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