国勢調査に対するカナダ政府の新方針 by サンダース宮松敬子(2011年10月)

世界の多くの国では、国勢調査というものを数年ごとに行なっているようだが、これは国のあり様を示す大きな指針となる。カナダは前回が2006年だったことで、今年2011年がその年に当たる。

この国は外国からの移民が多いため、調査に使われる言語は英・仏の公用語以外に20カ国の31言語が用意され、加えて、先住民の11の異なった言語での回答が可能である。

去年の春カナダ政府は、プライバシーの保護や、提出義務を怠る人への罰則の見直しなどを理由に、調査回答を「任意」にする方向に動いた。これには大きな議論が巻き起こり、統計局の主任統計官が抗議のために辞任したり、またヘルスケア、教育関係者、エコノミストを始めとする学識者たちがこぞって反対キャンペーンを繰り広げた。

赤字政府にとっては、手間を省き予算をカットすることも一つの目的であったが、大いなる議論の根底には「調査方針の変更に関する決定権は誰にあるのか」と言うこともあった。

確かに、「任意」などという曖昧なやり方では、統計の結果を基にして国民のニーズを考える時、例えば、教育関連の雇用問題、公共住宅の供給計画、交通網の問題点等々の実態が不確かな数字になってくる。また低所得者、移民、先住民といった層からの回収が大幅に下回り、情報が偏ってしまう恐れもある。

オタワの国会議事堂

しかし今回は政府の新方針通り、「労働・雇用に関する調査」「ビジネスに関する調査」「農業関連の調査」以外は任意ということになり、調査結果の最初の公開は2012年2月から徐々に開始される。

またこの他にも、5年ごとの国勢調査ではないが、統計局の管理下で毎年行なってきた「婚姻率・離婚率の各年の統計」を取り止めることが8月初旬に決定された。婚姻率は1921年、離婚率は1972年から継続されていたが、取り止めることで25万カナダドルが節約できるという。

だがこの調査に関しては、予算問題以外にもカナダ社会で結婚・離婚の概念が曖昧になっていることが挙げられている。

特に仏系カナダ人の多いケベック州では、カップルの1/3はcommon law(内縁関係)であるため、共同生活年月によっては統計数に反映されない。となれば、調査に意味がないというのは理解できるが、統計学を基礎にして社会のあり様を分析する学者たちは、継続して数字を示すことの重要さを説く。

離婚率と子供の貧困や老後の問題点、ヘルスケア、メンタルケアに及ぼす影響などを理解しすることが政策に反映されるからという。

「支出の見直し」という大義名分は、一件理屈が通っているように聞こえる。だが、去年の夏トロントとその周辺で開催されたG8と G20の国際会議に、ハーパー政権が使った警備費は20憶カナダドル。これに関し政府からの説明はなく、また必要以上に神経を尖らせた警察の取締りで罪のない多くの若者が検挙された。

5月の連邦選挙で多数派の保守政権を獲得したハーパー首相は、保守傾向をより一層濃厚にしている。また彼と親しい同じ保守派のトロント市長も、予算カットを全面に打ち出す政権を昨秋から継続している。

こうした政策が、廻りまわって若者や貧困層の不満に繋がり、英国のロンドンで今夏起きた暴動と同じような問題を起こさないようにするには、政治家の技量が大いに試される。

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