移民の街・トロントの適応性 by 空野優子 (2011年10月)

移民の国カナダの中でもトロントは移民の移住先の第一候補であり、その人口に占めるカナダ国外で生まれた人の割合は今半数を超えているとのことである。

人口の半分が移民、しかも最近の移民の大多数はアジア、アフリカなどの非英語圏の出身と聞くと、そんなんでどうやって都市として機能するの?と疑問をもたれる方も多いだろう。少なくとも私はこっちにやってくる前にその事実を知っていたらそう考えていたに違いない。

実際暮らしてみると、まあとりあえず何とかなっている、というのが単刀直入な印象である。

例えば、日常生活に関しては、多くの場合、移民は家族・親戚を頼ってやってきているか、そうでなくても出身国のコミュニティがどこかに出来上がっている場合が多いので、まず自分のコミュニティのネットワークを最大限に利用することになる。

もちろん政府の補助で運営されているニューカマー用のインフォーメーションセンターや英語学校などもあるが、先にやってきた移民のネットワークの役割というのはかなり重要だ。

例えば英語に自信のない日本人の場合、日本語のトロント情報交換サイトがいくつかあり、そこで家探しなどの目下必要な情報はたいてい手に入る。中華系・南アジア系(インドやパキスタンなど)などの大規模なコミュニティでは、食材店から銀行、病院にいたるまで出身国の言語でサービスが受けられるので、英語に不自由しても日常生活で不自由することはあまりない。

私は先日中華系の友人の結婚式に参加したが、そこでは中華系の牧師が広東語と英語のバイリンガル(まず広東語で話し、同じ内容を英語で繰り返すという形式)で式を執り行っていた。さすが!

これだけ移民の数が多いと、私も含め英語が母国語でない人が職場でもめずらしくない。そうなると言語、文化の違いからコミュニケーションに問題がおこるかというと、答えはまた基本的に否である。ただ、この場合は移民自身の努力に加え、カナダ生まれを含めたこちらの人の一般的なおおらかさにもだいぶ助けられているように思える。

今のアパートに入居して間もないころ、流しの水漏れに困り管理人に連絡したことがあった。ほどなくしてやってきた水道工のおじさんは全く英語を理解しない様子。とにかく身振り手振りで問題の箇所を説明することになったが、私のカナダ人のルームメートは「言葉で水道管修理するんじゃないんだから」と全く気にも留めていない様子。

つまり、必要なことが伝わって、必要な仕事がなされればよい、という考えなのである。また、先日こんなこともあった。私の職場でカナダ在住3年程度の学生バイトの一人に、センターの会員に登録更新の案内をするよう指示したところ、とてもてきぱきした彼女はさっそく登録更新の必要な100人ほどをリストアップ、一斉送信でメールを送った。

ところがその文面が、(日本語に訳してみると、)「もうすぐあなたの期限が切れる危険に陥っています。お願いですので早く更新しなさい。」といった感じで、意味は通るが語彙も文法も適当とはいえないのである。監督役の私はしまった!とはらはらしたが、結局メールを受け取った人のうち、苦情を言ってきた人は1人、ウイルスメールかと心配してわざわざ連絡してくれた人が1人、残りは何事もなかったかのように登録更新用紙を記入して返信してくれた。このような例は枚挙に暇がない。

ちなみに当然ながら、移民本人にとっては第一言語でない言葉で仕事をするというのは容易ではない。ビジネスで使う英語というのは日常生活で支障ない言語力とはだいぶ違うもので、言葉・コミュニケーションで苦労するというのは成人してからやってきた移民に共通の経験ではないだろうか。

私の場合は最初の職場に移民の同僚が多く、スタッフはみな寛容であったためだいぶ助かったが、それでも最初の数ヶ月は電話に出る、会議で発言する、というたびにとても緊張していたのを覚えている。

このような社会で暮らしていると、人間というのは本当に適応力があるものだ感心してしまう。移民がカナダ社会に適応すべく努力するの同時に、カナダ育ちのたいていの人はこの変わりゆくトロントの町でより楽しく生活すべく適応するようである。

もちろん多様性を歓迎しない人、これ以上移民が増えることに賛成しない人は、カナダ出身であるか否かに関わらず少なからずいる。ただ、好むと好まざるとに関わりなく、事実として(私も含めて)移民はすでにたくさん来てしまっているわけで、その現実の中でうまくやっていく方法を探さなければいけないし、実際やってみればなんとかなるのである。

私にはこの何でもありのトロントと、その中に生きるおおらかな人々がこの街の魅力でありここで生活するおもしろさに思える。様々なバックグラウンドの人と接せざるをえない日常生活で、その現実にぶつぶつ文句を言っても、結局は一番損するのは本人なのではないだろうか。

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