ネイティブスピーカーの英語習得 by 空野優子 (2011年11月)

私はトロントにあるAlexandra Park Neighbourhood Learning Centreというコミュニティセンター(日本でいう公民館、図書館、市民体育館、市民プールを全部一緒にしたような施設)の成人向けの英語識字教室で教えている。

生徒さんのバックグラウンドは様々だが、たいていの人は英語を第一言語として生活していて、諸々の事情により義務教育を終えられず、大人になってから英語の読み書きを勉強しなおそうとやって来られる。

さてこの英語教室、中学卒業程度の英語の読み書きの力習得を目標としているのだが、教える側の私にとっても学びの多い場である。

もともと話せるんだから非ネイティブに比べたらなんてことないと思われるかもしれないが、こと読み書きに関しては、大人になってから学ぶネイティブスピーカーならではの試練(?)もあるのである。

まず、話し言葉をそのまま文章にする傾向にあり、書くときに句読点(ピリオドとコンマ)をほとんど使わないこと。たとえば“My daughter’s name is Maria she is 15 years old she is such a smart girl”(私の娘の名前はマリアです彼女は15歳ですとても賢い子です)といった感じで、文と文との間に区切りがないのである。

日本の中学校で“I am Tom. This is my pen.”と英語を習った私なんて、My daughter’s name is Mariaのあとには自動的にピリオドを打ってしまうのだが、どうしてそこで文章が終わるの?と聞かれると説明は簡単ではない。たしかに話すときにはどこで文章が終わるかなんて意識しないわけだから、この質問はもっともである。文章がさらに長く複雑だと、話はもっとややこしい。

日本語のように、動詞が文末にくることもないし、「です」「ます」などの文章の典型的な終わり方といったものも英語にはない。教科書にならって「一つの意味が完結しているのが文章」、「これが主語でこれが動詞だからココで新しい文章がはじまるでしょ、だからその前のココで終わらせるのが決まりなの」などと(苦し紛れに)説明しても、学んでいる本人はあまりしっくりこないご様子、ということが多い。

生徒さんの中には、作文の課題のたびにまず(ピリオドなしですらすら)内容を書き上げてから、さて今度は句読点、ということで読み直しながらテンとマルを入れていく、という作業をする人もいる。英語のピリオドというのは案外厄介な存在である。

そのほかに同音異義語、というのか音は一緒でも綴りが違う単語(“too” 、“two”と “to”、 “there”と “their”など)の区別が難しい。「そのとき」という意味の“then”、比較に使われる「~よりも」を意味する “than”も、厳密には発音は違う(と私は思う)のだが、区別して発音しないネイティブも多いらしく、私の経験では、この二つを混合させるのは非ネイティブよりもネイティブに圧倒的に多い。

加えて、カリブ海の国出身の人などはカナダの標準英語とはだいぶ異なった英語を話すので、動詞の過去形や名詞の複数形を読み書き用に学ぶことも多い。彼らの間で話している言葉は私にはほとんどわからず、私のために「通訳」してもらう、なんてこともある。

この英語教室、いろんな国から集まった、いろんな苦労を経験しつつ(フルタイムで働く母子家庭のお母さんも多い)、やっぱり学校に行きたいとやって来る人たちの学びの場となっていて、その輪の中にいられることはとても幸せである。

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