大盛況に終わったトロント日本映画祭  (高畠 晶)

6月21日に第1回トロント日本映画祭(Toronto Japanese Film Festival – TJFF)が、岩井俊二監督の『Friends After 3.11』をクロージング映画として、2週間のイベントに幕を閉じました。

日系文化会館(JCCC)で行われたこの映画祭は、『八日目の蝉』を皮切りに、日系コミュニティに人気のある侍映画の『一命』、家族向け映画『忍たま乱太郎』、アニメーション『Colorful』、感動ドキュメンタリー『エンディングノート』など、バラエティに富んだ計13作品を上映し、そのうちの3作品はチケットが売り切れになるなど、大盛況に終わりました。

また、このサイト「Group of 8」のリーダーであるサンダース宮松敬子さんが情熱をもって、トロントに作品のみならず監督まで引っ張ってきたという、イサム・ノグチの母を題材にした『レオニー』は、この映画祭のハイライトでした。

イサム・ノグチが大好きな敬子さんは、ある日『レオニー』に関する記事を日本で見かけたことがきっかけで、松井久子監督に連絡を取り、彼女の来日まで実現させてくれました。上映はもちろん満席で、監督のQ&Aも素晴らしく、50歳から映画を撮り始めたという松井監督は我々女性に希望を与えてくれました。

去年の秋頃、JCCCのJames Heron氏と打ち合わせをしていた時に、Jamesから突然この映画祭の企画を相談されました。去年まで会館で開催していた新世代映画祭がトロントのダウンタウンに移るため、次はもっと日系コミュニティに人気がある作品を集めた映画祭を行いたいということでした。

そこで、日本で賞を受賞したり、観客動員数が多かったり、また批評家からの評判が良かったりする作品を、色々なジャンルから集めようということになり、Heron氏の頑張りもあり、このようなラインアップにすることが出来ました。

私にとって思い入れの強かった作品は最終日の『Friends After 3.11』です。宮城県塩釜市でBIRDO FLUGASというアートギャラリーを運営している友人がいるのですが、震災後しばらく連絡が取れずにとても心配していました。

幸い彼女も家族も全員無事で、家もギャラリーも津波の被害にはあったけれど、また住める状況に戻すことが出来た友達に、去年の11月に宮城県で再会することができました。その時に聞いた地震直後の経験はかなり壮絶で、彼女が携帯で撮影した津波の映像もとても生々しいものでした。

それを見せてくれた後に、その映像は岩井俊二監督の最新作のドキュメンタリー映画に使用されていて、友人もまた映画の中でインタビューを受けている、と教えてくれました。実は彼女は岩井監督と親戚ということもあり、早速DVDを借りて映画を観ることが出来ました。

アイドルやミュージシャンから大学教授まで、放射能に反対する各方面の人々にインタビューをし、また被災した現地に行って震災から数か月後の様子を撮影した映画はとても興味深く、岩井監督ならではの感性によってアンチ原発、震災の現実が描かれている映画だと思いました。

監督自身も宮城県出身で、3.11以前はLAに住んでいたにも関わらず、原発も含めた日本の状況をなんとか変えたいという意志でもって、震災後すぐに日本に戻ってきてこの映画を撮り始めた、と私の友人は語ってくれました。地震の当日東京にいて、その後の原発事故もニュースなどで時差なしで経験していた私にとって、全てが強烈な体験で、特に原発に関しては深く考えさせられました。

それまでは原発のことなど考えたことがなく、東京で暮らしていた時には電気がどこから来ているかなど、疑問にも思わなかった自分が恥ずかしかったので、この映画を通して少しでもトロントにいる人々に日本の現況を知って欲しい、という気持ちで選びました。

鏡開きで幕を開けた映画祭は、小林アワード(JCCCに親子2代にわたって深く寄与しているマーティン・コバヤシ氏)を決めるアンケートのくじ引を行ったクロージング・レセプションで幕を閉じました。小林アワードは、一番評価が高かったオープニング映画の『八日目の蝉』が受賞しましたが、僅差の『レオニー』も特別賞を受賞しました。

第1回目からとても盛り上がったトロント日本映画祭、来年も楽しみにしていて下さいね!!

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