子供への体罰 by サンダース宮松敬子(2012年8月)
子育て真っ最中の親にとって、子供の躾は頭の痛い問題の一つだ。私も遥か昔にその過程を通ったが、いまだに「どの様に叱るのが一番いいのかな?」ということに自問自答したのを昨日のことのように覚えている。
もちろん当時も、そしておそらく今も“これが絶対だ”などと言うマニュアルがあるわけではない。それは言うまでもなく、個々の家庭、個々の環境、個々の子供によって異なるからだ。
何処までが許容範囲内の、つまり「しつけ」ということで「叱る」ことが出来るのかの判断は難かしい。加えて、お尻を叩くなどの多少の「体罰」をともなう場合は、それが子供にどれ程の影響を与え、良い結果、或いは、悪い結果を与えるかも充分に考慮しなければならない。
だが親は概して忙しい。夫婦で働いていれば子供と接触する時間は限られているし、片親の家庭の場合ならばもっと時間がない。叱る時にいちいち細かいことを考えている暇などあればこそ。つい感情に任せることも多々あることは、子育て経験者には充分に分かるだろう。
子供は普通そうした親の事情は子供なりに分かっているのだが、時にはこちらの気持ちを見透かすかのように、困らせたりわがままを言ったりするなどはよく聞く話である。
今この時期(8月)は、何処も夏休みで親子共々少し時間的余裕があることを嬉しく思っている家庭も多いだろう。そんな時期の7月初旬に『子供の 時に受けたSpanking(体罰)が、長じてから精神面にどのような影響を与えるか』という研究が、カナダの中央平原に位置するマニトバ州にあるマニト バ大学(ウィニペッグ市)のTracie Afifi助教授とそのグループによって発表された。
一般的には、少なくとも子供の半分以上は、幼少期に親や保護者からある程度の体罰を受けた経験はあるといわれる。
しかしこの研究は、その「ある程度」を超えて、手荒く押したり突いたり、あるいは殴られたりの経験のある子供時代を過ごした人々を対象にしてい る。調査は2004~2005年にかけてアメリカで行なわれた「アルコールと関連疾病に関する疫学調査」の中から、3万5千人ほどの協力者(20歳以上) を得てインタビュー形式で実施された。
それによると、協力者の7%は幼少期に「時々、かなり頻繁、頻繁」に体罰を受けた経験があり、結果として、大人になってから、情緒不安定、人格障害、薬物などの耽溺症に陥る傾向があるという。
また、忘れがたいほどの虐待や、それに近い経験をしたことのある人の20%は成長後にうつ病になり、43%はアルコール中毒に陥っている。この割合を、そうした家庭に育たなかった人と比較すると、それぞれ16%、30%となる。
確かにひどい体罰を受けて育った場合の方が、数字が高いことは事実だ。しかし一方では、どんな家庭環境であってもメンタルの問題は、後年になっ て発症する可能性もあることを示している。例えば「遺伝」などもその一例だが、他にも家庭内の出来事ばかりに留まらず、学校などで常時いじめに遭った子供 たちもここには含まれるのではないかと思う。
オハイオ州のトレド大学医学部の精神科医Michele Knox氏も「体罰は頭脳に負のインパクトを与え、ストレスを増大させる」と忠告している。大人はもちろんのこと、囚人や動物でも体罰は禁止されているに もかかわらず、抵抗できない子供への暴力は、どんな場合でも禁止すべきだと多くの精神科医たちは強調する。
付随だが、子供(2~12歳)への体罰は世界の32カ国で禁止されているが、カナダやアメリカでは「妥当と判断できる範囲内」であれば合法である。だが機具を使ったり、頭を殴ったり、またアザが残るような場合は「虐待」とみなされる。
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