日本のグレーゾーン、カナダのグレーゾーン by 広瀬直子(2012年10月)

2011年国勢調査のロゴ

前回7月に筆者が書いた記事「自分の呼ばれ方を自分で決められるということ」では、結婚という一見白黒はっきりしていそうな制度でも、カナダではグレーゾーンがいかに大きいか、について述べた。

カナダで家族のかたちの多様化が進んでいることは、2011年の国勢調査の結果にも現れた。「夫婦と子ども」という、かつて典型的とされた家族が減る一方で、事実婚、同性婚、子どものいないカップル、一人暮らしの「おひとりさま」が増えているというものだった。

しかし。

多様なライフスタイルを尊重し、グレーゾーンがポジティブに受け入れられるはずのカナダで、妙に白黒はっきりさせなくてはいけないものがある。「宗教」だ。

宮参りや初詣で神社に行き、祖父母の葬儀は仏教、しかし普段何らかの宗教上の規則に従っているわけではない、という日本の典型的な宗教事情のもとで育った私の「宗教」は、白黒がまったくはっきりしていない。グレーもいいところである。

カナダに住んでいると市井の会話で「あなたは仏教徒?」なんて聞かれることは日常茶飯事。説明が面倒なときは “sort of.(それなりにね)”と苦し紛れの回答をする(「それなりの仏教徒」とは一体何なのか?と自問もするが)。しかし、市井の会話ならともかく、公式の国勢調査でまで「宗教はなんですか?」という質問に回答欄が一つしか用意されていない。

以下は2011年国勢調査の質問事項。

      1.この人(世帯代表)の宗教は何ですか?特定の宗派または宗教を、この人が現在その宗教グループで実践していない場合でも答えてください。例えば、カトリック、合同教会(・・・などキリスト教の各派)、イスラム、ユダヤ、仏教、ヒンドゥー、シーク、ギリシャ正教など <<ここに一つの回答を書く>>
      2.無宗教

回答欄が一つしかないことに加え、なんでキリスト教だけ各派が詳細に例示されているのかもよくわからない。他の宗教にも複数の宗派があるのに。それに、宗教を回答するのは世帯代表だけ。拙宅のように、宗教がそれぞればらばら(夫はカトリック育ち)な家族もいるという点に配慮がなされていない。

日本の平成23年の国勢調査の結果を見てみると、仏教系8000万人、神道系1億人だった。日本の人口は1億3000万人。つまり、仏教かつ神道であると回答した人が大勢いるということだ。初詣もするし亡くなったら仏式で葬儀を出されるであろう人が「無宗教」と答えることも、日本ではありそうだ。

6世紀の昔から神道と仏教が共存してきた日本で生まれ育った人の宗教は、あいまいなことが多い。そしてそれは、いい悪いの問題ではない。なのに、カナダの質問は「誰だって宗教はひとつでしょう」というキリスト教やユダヤ教的な白黒はっきりした宗教観を背景にしている。

私は生まれてこの方、公式な書類で宗教を問われたことが3回あると思うが、それはいずれもカナダの政府のものだった。上記の国勢調査と10年前に結婚したときの申請書である。それぞれパートナーの宗教が問われ、そのときも回答欄はひとつしかなかった。無宗教の人前式だし「こんな情報なんで要るんや」と思いつつ、「仏教徒」と書いたのを覚えている。

多様性を尊重するなどと言いつつ、カナダの宗教に関する質問は「白黒はっきりしろ」と迫る。

私は実は「仏教」「神道」「無宗教」のうちから一つをそのときの気分で適当に選んで書き込んでいる。不謹慎なのかもしれないが、それが私の宗教事情の真実だから仕方がない。

カナダ統計局ウェブサイトでは、2011年国勢調査の結果を順次発表している。2012年10月29日時点、カナダの言語状況が発表され、5人に1人は英語もフランス語も母語としないことなどがわかり、興味深い。)

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