トロントの中華料理レストランで考える集団主義と個人主義 by 佐々木掌子 (2013年1月)

トロント滞在中、中華料理をいくつかの民族の人と一緒に食べる機会があった。

全員日本人の場合、私のまわりはこんな感じである。「何か食べたいものない?」「とりあえずチンジャオロースは絶対」「あんかけ系の何か」「あとはじゃあ適当に」。取りまとめるのが上手な人が、適当に前菜、主菜となるようなものを見繕ってオーダーする。決めるのが面倒だとコース料理になることもある。

所属していた研究所のメンバーと中華料理に行ったこともある。私以外は全員白人。ユダヤ人が多かった。

「掌子は何を食べたいの?」。出されたものを適当につまもうと思っていた私は、慌てて本気でメニュー探しに取り掛かる。

「あなたは焼きヌードルね」、「あなたは牛肉と蟹の蒸し焼きね」、「あなたは鶏とカシュナッツの炒め物ね」……。一人ひと皿のノルマ。もちろん小皿が配られ、ある程度シェアはするのだが、「この皿は掌子のもの」、「あの皿はケンのもの」という意識が強い。その席にはベジタリアンが二人いたということもあり、「皿の全ては全員で共有されるもの」という前提がなかったのだ。

その後、中国本土、台湾、香港出身の人たちと日本人数名で中華料理を食べに行く機会があった。われわれ日本人はアウェイゆえ、彼らの動きを待つことにする。すると台湾出身の女性が中国語で店主を呼び、何やら交渉。おもむろに店主が持ってきたのは、なんと中国語で書かれたその店の「裏メニュー」であった。あとは華麗なる彼女のメニュー選択の数々。

カシュナッツとキクラゲの野菜サラダや豪快な白身の蒸し魚。エビの揚げ物には甘めの中華ソースがかかっている。デザートには白濁した甘く優しい味のスープ。

初めて口にした、甘いスープのデザート

10皿以上の見たことのないメニューがずらりと並び、裏メニューまで駆使した、まったく想像のつかないメニューの選択に驚くばかりだった。そして、“Are you full?”と全員がお腹いっぱいになったかどうか、オーダーしてくれた彼女が確認をしてくれる。

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Geert Hofstede(2001)※という、オランダの著名な社会心理学者がいる。彼の業績に、文化分析の切り口のひとつ、「集団主義と個人主義」を測定したことが挙げられる。

個人主義傾向の強い社会では、「個人」が強く意識され、集団よりも個人でのパフォーマンスを向上させることに力点が置かれる傾向がある。優先されるのは、集団の利害よりも個人の利害だ。

一方、集団主義傾向の強い社会では、「集団」が強く意識され、集団でのパフォーマンスを向上させることに力点が置かれる傾向がある。優先されるのは、個人の利害よりも集団の利害だ。

これを国別に得点化したところに、Hofstedeの研究の面白さがある。個人主義得点の高い国から順に、いくつかの国をピックアップしてみよう。

米国91点、英国89点、カナダ80点、オランダ80点、ベルギー75点、スェーデン71点、アイルランド70点、スイス68点、ドイツ67点、スペイン51点、ブラジル38点、マレーシア26点、中国20点、シンガポール20点、タイ20点、韓国18点。

さて、この「個人主義指標(individualism Index)」、日本は何点かご存知だろうか。正解は、46点。そう、日本は、個人主義にも集団主義にも針の振れない、ちょうど中間に位置する社会なのである。

中華料理をみんなで食べる、という行為にみえた「個人が自己主張をし責任をもって食べる」個人主義のようなスタイルと、「トップが差配し連帯責任で食べる」集団主義のようなスタイル。どちらのスタイルにも戸惑いと同時に共感も覚えたのは、私が日本という中間に位置する社会で育ったからか。

※Hofstede, G. (2001). Culture’s consequences: Comparing values, behaviors, institutions, and organizations across nations (2nd ed.). Thousand Oaks, CA: Sage.

Hofstedeのホームページは以下。

http://www.geerthofstede.nl/

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