オンタリオ州に初の女性首相誕生 by斎藤文栄 (2013年2月)
カナダ最大の人口を抱えるオンタリオ州の首相に、初めて女性が就任した。名前はキャスリン・ウィン。これでカナダ10州の半数、5つの州の首相が女性ということになる。(準州も入れると6番目)。また彼女はレズビアンであることを公言している初めての州の首相でもある。
前任者のマギンティ首相が昨年11月に突然辞任を発表した後、後継者選びがオンタリオ州政治の焦点となっていた。総選挙という道もあったが、2011年秋に選挙を行ったばかりであり、今回は選挙ではなく、自由党内の後任者に首相のポジションを譲るという形をとった。党内選挙ですませてしまうところはなんだか日本の政治を思い起こさせられる。しかしそれでも党の代表選の決選投票が女性同士の争いとなったときは、おおっと思ったものだ。
この二人、キャスリン・ウィンとサンドラ・プパテロは見た目も政治スタイルもまさに正反対といっていい。キャスリンは化粧っけのない外見で、政治スタイルも協調型。対するプパテロはお色気系の、赤いルージュが目印のこわもて派。選挙後にこのプパテロが自分の支援者の男性の肩に手を置いた仕草が、どうも日本の某保守系こわもて女性政治家が他の男性の政治家に猫なで声でこびている姿を想像させて気持ちの良いものではなかった。政治家としての実力はよく知らないが、ああ、ウィンで良かったと心から思った瞬間だ。(しかしプパテロの名誉のために言っておくが、彼女はあくまでも自由党員である。)
ところで州の半数が女性首相というと、カナダでは女性の政治進出がさぞや進んでいるのではと誤解を招きそうだが、実はそうでもない。ウィン自身ももっと州や連邦議会の女性議員が増えなければだめだと言っている様に、オンタリオ州議会は28%(30人/107人)。連邦議会下院では24.7%(76人/308人)と、半数にはほど遠い数字である。それでも従来女性が少なかった政治の世界で、この数字は一見、よくやっているのではと思う人もいるかもしれないが、列国議会同盟(IPU)の統計では、昨年末の時点で世界第45位と、世界ではマダマダというレベル。
翻って日本はというと、昨年末の衆議院選挙で当選したのが480人中38人、割合で言うと7.9%というお粗末さ。先の列国議会同盟の統計では、ボツワナと並んで122位という恥ずかしくなるような順位である。ここまで少ないとそろそろ本気で女性のクォーター(割り当て)制を考えるべき時期に来ているのではないかと思う。
さて話をカナダに戻そう。ウィンは、初のレズビアンを公言した州首相であるという点も注目されている。ウィン自身はレズビアンという部分に焦点があたりすぎるのを恐れているのか発言も控えめだ。しかし、ウィンの横にパートナーの女性が立ち、二人で手を振っている姿が幾度となく映し出されるのを見ていると、時代の変化を感じさせられずにはいられない。この変化の波に乗って、もっと多くの女性を、ゲイ・レズビアンを、マイノリティを、議会に届けることができるよう祈っている。