肥満対策VSやせ願望 by サンダース宮松敬子 (2013年8月)

過日『「米国の肥満が世界を滅ぼす」英研究チーム、食料危機に警鐘』というニュースが目に付いた。興味深かったのは「人は体重増加にともなって食料からの摂取エネルギーが増える。米国は世界人口の6%しか占めないが肥満率は34%。(カナダは24%)。 一方世界人口の64%を占めるアジア地域やその他の国々の肥満度はわずか13%。貧しい国では子沢山が指摘されるが、この批判は間違っており豊かな国の肥満人口増加こそが食料の危機を招く」と警鐘をならしている点だ。

これで思い出したのは、30余年前にトロント大学の成人向け講座で「心理学」を受講したときのことだ。講義には栄養学と心理学を絡ませた授業もあって学期末にレポートを書かされた。私は「北米の人が食事量をせめて1/3減らしたら、世界の食糧危機が大分救われ、何よりも肥満が減少し精神衛生上良好ではないか」と書いた。

当時は今ほど世間が「太り過ぎ」に敏感ではなかったが、このトピックを採り上げたのは、明らかに「肥満」と分かるカナダ人がすでに多かったからだ。学期中初めて「A+」を貰い有頂天になった。

肥満に関する新聞記事の切り抜き

肥満に関する新聞記事の切り抜き

だが最近はこの手のニュースには枚挙にいとまがない。

半年ほど前Ontario Medical Association の医師たちは、特に発育盛りの子供に焦点をあて、政府主導で策を講じなければ肥満児が増える一方だと警告し、幾つかのアドバイスをまとめた。一例として、甘い飲料水やジャンクフードと言われるものに栄養価を表示したり、レストランのメニューや食料品店でもカロリーを書いたものを添付すべきと言う。

何よりも怖いのは、ジャンクフードを好むDNAは次世代にも受け継がれるため、どこかでその連鎖を断ち切る必要があると医師たちは言うのだ。

オンタリオ州は去年だけでも、肥満関連の疾病のために45億ドルも使っている。州の保健大臣は事態の深刻さを把握しながらも、飲食産業に及ぼす負の部分を考慮するためか、大きなキャンペーンを張ることには躊躇している。

一方ケベック州では、すでに30年以上も前からファーストフード店で13歳以下の子供に配る「おまけ」の廃止をしたり、関連の宣伝をストップした。お陰で去年のヘルス関連の報告によれば、北米のどの町より肥満児が少なく、ジャンクフードの消費量も少ないという。

マクドナルドの写真(地下鉄でとったので、ライトが入ってしまいした)

マクドナルドの写真(地下鉄でとったので、ライトが入ってしまいした)

実社会ではこのように肥満人口増加が問題視される一方だが、玩具業界では、理想に近づきたいという欲望を反映してか、50余年もの間あり得ない体系のバービードールが売られ続けている。違和感を覚える人は多いようで、米国の某アーティストは、最近19歳の平均的アメリカ女性の体型数字を元に右側の人形を制作した。

サイズの相違はバービーのウエストが46センチに対し19歳の女性は79センチ、バストの比較は91:81。数字の違いに驚くが、女児の憧れが凝縮しているためか人気は衰えを知らないようだ。

だがこうして理想とする体型願望に過度に支配されると、自分の外観にコンプレックスを持つ原因になる。

人は誰しも、もう少し目が大きかったら、鼻が高かったら、脚が細かったら、などなど悩みを持っているものだが、これが病的に高じるとBody Dysmorphic Disorder「身体醜形障害」と呼ばれる心の病に陥る。

\バービードールの体型比べです

バービードールの体型比べです

アメリカでは1995年の調査ですでに人口の1%がこの障害を持っていたと推定され、日本では更に数年早い90年頃からの増加を見ている。原因は不明とのことだが、環境的、遺伝的要因や脳内化学物質などの関与が考えられるそうだ。

これら心の病を抱えた人々は、偏ったボディーイメージを持っているため、醜いと思う部分を化粧、衣類、帽子などで極端に隠す一方、痩せ願望に陥り、過度の美容整形や運動をして、強迫性障害、うつ病、摂食障害などになったりもする。

日本の若い女性の痩せ願望は語られて久しいが、厚生省によると「やせ」は20年前には14.2%だったのが、今は23.3%に増加しているという。日本女性、大丈夫かな?!

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