街の図書館 by ケートリン・グリフィス
トロントの小学生の夏休みは9週間と長い。その間、本を読んでもらおうと図書館が毎年なんらかのテーマで、子供たちの足を図書館へ引き寄せるようがんばっている。今年(2013)のテーマは「旅」。今年の夏、小学生なら誰もが図書館で「パスポート」がもらえる。本一冊読むたび、図書館員に報告をする。サイコロを転がし、出た数字にそった質問に答える。例えば:「登場人物?」「どんな終わりだったのか?」「良かったところは?」「気に入らなかったところは?」など、その本について語ってもらった後、パスポートに張る大きなシールがもらえる。
選ぶ本は子供の自由。とにかく本の良さ、本というパスポートでどこにでも行ける!その喜びを子供たちに知ってもらいたい、という願いがこもったイベントだ。さらに夏休みの間、各図書館で週1回子供向けのショーも開催している。マジックショーだったり、人形劇だったり。喜ぶ子供もそうだが、お金がかからないので、親としても大満足。
このパスポートに張るためのシールだが、カナダの田舎町の名が暗号として印刷されている。その暗号を専用Webで記入するとWebゲームの鍵がひらき、ゲームができるような仕掛けだ。新しいシールの暗号を打ち込むたび、新しいWebゲームが楽しめる。しかも、シールを9枚もらうと(本を9冊読むわけだが)懸賞本がもらえるのだから、けっこう大掛かりで素敵なイベントである。
「無限の可能性が本・図書館にはある」ということを子供たちに知ってもらいたい、と思っているのは、図書館員だけでない。もっと身近なところにもある街角の”Little Free Library”もその一つだ。このフリー・リトル・ライブラリーは数年前アメリカから始まり、次第に世界に広まってきている。本が手軽に借りられ、返却は自由だし本の提供もできる、そういった簡便なシステムが現代の生活スタイルにあっているのだろう。
個人宅の通りの前に一見、「豪華な小鳥小屋?」と思わせるが、実は「本小屋」である。私が住んでいる辺で見かけるこの洒落た「本小屋」は2段構成で、上の段には大人の本、下の段には子供の本で統一しているようだ。
犬の散歩中に通りかかるこの「自由で小さな図書館」。「自分が好きそうな本は?」「娘に何か?」となにげなくチェックしてしまう。また他の人にも読んでもらいたいと思う本を時折置いていく。
知らない人が殆どの都会生活。直接の触れ合いはないが、本を通してなんとなくコミュ二ティー精神が高まり、自分の街、住んでいる場所や人が好きになっていく。そして、本というパスポートで子供たちだけでなく、大人もいろんな人たちが羽ばたけるようになれたら素敵だろうと微笑みながら私は犬の散歩を続けるのである。
トロント市図書館の夏の読書クラブサイトhttp://tdsummerreadingclub.ca/
リトル・フリー・ライブラリーのサイト http://www.littlefreelibrary.org/