死後50年、ジョン・F・ケネディ元大統領 ~なぜキャロライン・ケネディ氏はダラスの式典に参加しなかったのか~ by サンダース宮松敬子 (2013年12月)

once upon a secret11月22日は、ジョン・F・ケネディ元大統領(以下JFK)が、テキサス州ダラスで暗殺されてから50年目の記念日だった。メディアはこぞって特集を組み、暗殺当日の白黒のフィルムがTVで繰り返し流された。

半世紀前のその日にすでに成人だった人たちは今は高齢になっており、また歴史上の「偉大な大統領」として憧れを持つ人たちは、ヒストリアン、作家、ミュージッシャン、JFKの甥や姪などを含め皆若者であった。

その年齢的対比が非常に興味深かったが、いまだに暗殺の真相が分からないながら、誰もが「落ちない偶像」をこもごも語っていた。

周知の通り、生存しているJFKの唯一直系の子どもは、娘のキャロライン・ケネディ氏一人であるが、彼女は11月15日に新大使として日本に赴任した。

日本での人気のほどは、信任状捧呈のため皇居入りする日に、馬車が通る沿道に並んだ幾層もの人垣を見ただけでも分かる。まるで人気絶頂の映画スター並みで、YouTubeでは「スイート・キャロライ~ン!」などと叫ぶかん高い女性の声が聞かれもした。

温かい歓迎振りを示すのは決して悪いことではない。しかし知名度だけは抜群でも、政界での経験がない外交の素人であることが心配されている。一筋縄では行かない中国、韓国、北朝鮮などとの関係にどのような手腕を発揮するのだろうか。

私はカナダからこの一連のニュースを見ながら、どうしても一つ腑に落ちない思いを拭えないでいる。それは、ダラスで予定されていた50周年記念日の盛大なイベントを承知しながら、あえて一週間前に日本に赴任したのは何故か、ということだ。

26日には、中国の防空識別圏の問題が浮上したものの、22日の週末以前にどうしても彼女が赴任しなければならない緊急事態があったとは思えない。多くの報道の中で、キャロライン氏の声明として唯一耳にしたのは、「父親の死は個人的なものと受け止めている」の一言だった。

だが、22日ホワイトハウスは星条旗を反旗にして、今だ「落ちない偶像」の追記億を保持していたし、オバマ、クリントン両夫妻が共にアーリントンに墓参りもしている。国を挙げて「その日」の演出を努めているなか、直系の娘が記念イベントに参列しないことを一般のアメリカ人はどう受け止めたのだろうか。

kennedy 2歴史上一番若い大統領、ホワイトハウスの執務室で無邪気に遊ぶ幼子を見つめる若いパパ、ファッション雑誌から抜け出てきたような美人妻。TVが普及するに連れ、その媒体をフル活用して、アメリカンドリームを地で行く家族のイメージ作りにJFKは抜かりなかったと言う。

まさに時代の申し子で、国民に新しい時代の到来を予感させ、若者文化が花盛りの60年代に実にうまくマッチしたのである。

しかし「家庭を大事にする爽やかな夫像・父親像」の裏にあった、信じられないほど多くの女性関係が明るみになるにつけ、実像と偶像のギャップに違和感を禁じえない人は多いだろう。

往年の女優マリリン・モンローと浮名を流したことは余りにも有名で、ジャクリーン夫人には大変な葛藤があったとのことだが、他にも幾多の女性が彼の短い人生(46歳)に去来した。

清廉なイメージが虚構だったことは「英雄色を好む」で片付けてしまえば済むことかもしれない。また関わったのが成熟した大人の女性であれば、男女関係を他人がとやかく言えるものではないのかもしれない。

しかしその中に一人、1962年の春にホワイトハウスのプレスオフィスに学生インターンとして来た19歳の「女の子」がいた。JFKはたった4日目に、彼女を妻ジャクリーンの寝室に誘い処女を奪ったのだ。その後大学生になってからも、暗殺される数日前までの一年半の間、彼女を「思い者」として自由に操ったのである。時には通う大学にホワイトハウスからのリムジンを送り、時には大統領専用機に同乗させ・・・。

名前はMimi Alford。昨年春に「Once Upon a Secret: My affair with John F. Kennedy and its aftermath」(邦題:私はジョン・Fの愛の奴隷だった)と題した本を、70歳になんなんとする当事者が出版したことで詳細が明らかになり、噂が現実のものとなった。

エロティックな描写などは余りない淡々とした回想録だが、半世紀前の自分の身に起こったことによって、その後否応無しにさ迷い続けた闇から抜け出るため、著者は「書く」という作業が必要だったのだろう。彼女は否定しているが、今なら紛れもなく「セクハラ・パワハラ」であり「レイピスト」とも言われかねない。

長じてキャロライン氏が、実父の幾多の女性との不誠実な行状を知らないわけがない。

彼女は、同性婚や妊娠中絶を擁護するリベラル派。いまだ低い日本女性の社会的地位向上に、氏の登場が大きな味方になるのではとさえ言われている。自身にも娘が二人いる。

もちろん、人々がJFKを慕う気持ちを抑えることは出来ない。政治家としては偉大であったのだろう。だが反面、出来上がっている父の偶像とのギャップを、実の娘としてすんなりとは受け入れることが出来ない葛藤が、心の何処かにあるのではないか。

それをして、元大統領の栄誉を称えるダラスでの盛大なイベントを、あえて避けたと思うのは荒唐無稽な想像だろうか。

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