刀とロマン by ケートリン・グリフィス

dagfinnr3

Dagfinnr (デーファインダー)

日本の歴史を教えていると、学生から日本についてよく聞かれる。

よくある質問が「侍」「忍者」そして「刀」について。歴史的にみると、刀を振り回しての闘いより弓矢での戦いが圧倒的に多かったのにもかかわらず、学生達からは「日本刀には魂が宿る」「日本刀は武士の誇り」「かっこいい」などとロマンあふれる刀話が飛びかう。「人を殺める武器の美しさを語られても・・・」と私など思ってしまうのだが。

「刀」と「剣」の違いもよくわからない私に実は剣職人の友人がいる。日本刀ではなくケルト剣の刀鍛冶でその世界では名が知られている剣匠だ。ヨーロッパ、アメリカなどで講義も行い、カナダ政府から表彰も貰っている。そんな彼はカナダのニューブランズウィック州に鍛冶場を構えている。数年に一度は休みを彼の家族と彼の村で過ごすようにしている。

彼の作品は“かっこいい”と思う。ケルトらしいデザインというか、あたかも神話の英雄が持っていたかのようだ。でも、あくまで剣、人を殺めるもの。彼は剣職人であるから、もちろん作品を売っている。世界中から問い合わせや注文がくるらしい。もちろん安全優先の特別郵便で届ける。「お客さんはこれを買って何をするの?」と一度聞いてみた。冗談好きの彼の答えは「考えないようにしている。」

Jake forging sword

剣職人のジェイク・パァウ二イン

でも実際の購入者は、剣のコレクターやケルト史の専門家、美術館やギャラリーからの依頼、またアイルランドやスコットランドで城のような邸宅を購入した方が壁に本物の剣を飾りたいから、と注文をするらしい。そういったことなので人を殺めたいがために購入する人はまずいない。

しかも彼の剣には「レジェンド」が宿っている。彼はこれから作り上げていく剣にどのような「話」が宿っていくのかをイメージした上で作業に取り掛かる。ケルト史の専門家でもある彼は、まずストーリーを決め、その「伝説」に合致したものを作り上げていく。時にはバイキングたちが持っていた剣もデザインするとのこと。

一度、「日本刀をどう思う?」と聞いたことがある。楽しそうにいろいろ語ってくれたのはいいが、正直話についていけなかった。何にせよ、日本刀の性能・技術がどれだけすばらしいのか、わからないなりにもその「すごさ」は納得できた。

普段遊びに行く時は彼の家族とニューブランズウィック州の自然を堪能し、ハイキングをしたり、海辺で泳いだり、ブルーベリーを採ったりと、とてもほんわかとした時間を過ごすだけに、彼が実はすごい剣匠だということをつい忘れてしまう。でも、確かに、夜が暮れ、ろうそくの明かりで静かに寝る時間を待つ間、彼は私たちにいろいろな物語を聞かせてくれる。この話の中に「レジェンド」はあり、このストーリーの延長に彼の剣がある。日本刀が好きだと目を光らせ語ってくれる学生たちも、どこからか「レジェンド」を聞きつけ惹かれていったのだろうと思う。しかし、その「ストーリー」の出どころが大抵はビデオゲームかららしいので、本好きの私としてはロマンに欠けているように感じるが、さてさて、これもビデオゲームをしない私の偏見だろうか。

ジェイク・パァウ二イン剣職人のブログ・ウェブサイトはこちらからどうぞ。

http://powning.com/jake/
http://jakepowning.blogspot.ca/

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。