青少年野球事情~日本とカナダの違い:組織:Baseball Mom繁盛記(2)by 鈴木典子

5月になり、トロントのあちこちで、野球やサッカーをする子供たちの姿が目に付くようになった。MLBの開幕と合わせ、トロントの少年野球もシーズンが始まった。Baseball Mom繁盛記(1)で、我が家ではトロント赴任が決まって初めに野球チームを探した話を書いたが、それ以来、日本とトロントで、青少年野球の仕組みや考え方の違いや似たところなどに触れてきた。改めて、日本と比較しながら、トロントの青少年の野球事情を整理してみたい。

まず最初に、日本の青少年の野球について、少し説明しておこう。

日本では、中学生以下の少年(正式には「学童」)野球では、軟式野球という、プロ野球や高校野球で使う革製の「硬球」とは違う、より安全なゴム製の「軟球」を使う場合が多い。ちなみに、この軟式野球は、日本が発祥の地で、海外では、台湾、キューバ、米国など、一部の国で行われているだけで、北米では軟球は主にバッティングマシンで使われているだけである。

一方、日本で子供が野球を始めようとすると、一番手近なのは、地域の少年野球チームで軟式野球をすることだ。中学になると、多くの学校に軟式野球部があり、都道府県単位での大会や、全国大会がある。高校生になると、「学童」から「学生」野球となり、晴れて硬球をつかえるようになるというわけだ。

高校に上がる前に硬式野球をやりたい場合は、中学校で硬式野球部がある学校は限られているので、クラブチームに入ることになる。http://www.a-and-k.jp/LSLadies/soshiki.pdf

一方、高校生になると、野球部は硬式野球が主流となり、逆に軟式野球部がある学校は少なくなる。また、高校以外で硬式野球をするには、いわゆる「社会人野球」に参加する形になる。http://www.jaba.or.jp/team/clubteam/index.html

このほか、地区の自治会やスポーツ少年団などが、レクリエーションや体力強化のために、野球クラブを運営することもある。

少年軟式野球は中学部は3年生、小学部は6年生がチームの代表で、地区大会、都道府県大会などに参加する。5年生、4年生以下のチームもあるが、6年生で活躍するための練習リーグのような位置づけだ。全学年が一つのグランドを使うことが多いので、まずは6年生のスケジュールが優先される。1年を通して練習をし、試合は春から夏と秋の地区大会がメインで、そのために対外練習試合を組んだりする。地区大会・都大会は、勝ち抜き戦なので、一回負ければシーズンが終わる。高校の地区大会と同じだ。チームではポジションが決められ、キャプテンが指名され、レギュラーにならなければ、ベンチを温めるだけの選手も多い。

さて、それでは、トロントで子供が野球をする場合は、どうなるだろう。

カナダのアマチュア野球は、カナダ野球連盟(Baseball Canada)の下に州連盟があり、その中に地域別の野球連盟、さらに地区別の野球連盟とわかれていく。我が家を例に挙げると、オンタリオ野球連盟(Baseball Ontario:通称OBA)の下に、トロント野球連盟(Toronto Baseball Association:TBA)があり、その中が5つの地域(Region)に分かれていて、我が家の地域にはNorth Toronto Baseball Association(NTBA)がある。女子野球については、地域を超えたリーグ・連盟があるが、上記の野球連盟は選手の男女の差別はない。http://www.ntbaseball.com/

NTBAの場合、地区別の連盟が年齢別(暦年で誕生日の属する年)のリーグを構成している。申し込めば無料でどこかのチームに所属できる「ハウスリーグ」は、おそらく、アイスホッケーのやり方から来ているのではないかと思われるが、2年ずつが一つのリーグとしてチームを構成している。「ハウスリーグ」に所属する選手から選ばれる選抜チームが「セレクト」で、ここから1年ずつのチームになる。さらに、「レップチーム」と呼ばれる、ハウスリーグに所属せず、NTBAを代表してほかの地域と対戦するチームもある。

この仕組みについては、ブログで紹介しているので、よかったら読んでみてもらいたい。http://blogs.yahoo.co.jp/tenkons2000/1116598.html

ハウスリーグは、連盟が登録された子供を年齢や住所をもとにチームを作り、試合の組み合わせと球場を決め、地元のスポンサーが作ってくれたユニフォームを用意する。地域には、ごく小さい子供用の球場から、セミプロも使える本格的な大きさと設備の球場まで、たくさんの球場がある。コーチは保護者などのボランティア。選手の起用はできる限り機会を均等にする、というのが大原則。勝ち負けよりまず試合にでること、野球を楽しむことが、ハウスリーグの「精神」だ。

このシステムのいいところは、どんな子供でも、地元の野球チームに所属して、とにかくすぐに試合に出られるというところだ。一番小さい子供たちは、T-Ballと言って、ティーと呼ばれる支えの上に乗せたボールを打つ。もう少し大きくなるとピッチングマシンが投げてくる球を打つ。ピッチャーが投げるのは10歳になってからだ。フォアボールがなくてとにかく打つか三振するまで打席が続くという決まりもある。打席はチームの選手全員にまわり、守備も外野が3人ではなく4人の学年もある。チームの人数が足りなかったら、相手チームから借りられる。だれでも、試合で必ず何回か打席に立てるのだ。カナダ人にとって野球はまず打つことがメインなのだ。

小さな子供たちは、空振りした、ボールが当たった、転んだ、ぶつかった、と言っては泣き、けんかをし、打てた、ホームインした、勝った、といってはチームメイトと抱き合って喜び、笑う。試合の後には、保護者の差し入れのおやつや、商売上手のアイスクリーム売りのバンが待っている。5月の初めにシーズンが始まると、平日の夕方と週末には、子供と保護者と犬の歓声があふれるというわけだ。

9月には、プレーオフと言われる決勝大会があり、シーズンの成績で組み合わせが決まるものの、どのチームも決勝大会に参加できる。勝ち負けにこだわらず、試合を楽しむリーグ戦と、勝ちあがって金メダルを目指すという決勝と、両方を経験できるのだ。

メモリアル・パーク

     リーサイド・パーク

学校では、トロント地区教育委員会(TDSB)では、クラブ活動として、中学校以下ではスローピッチのソフトボール、高校で野球がある。TDSBの中を地域で区切った体育協会ごとに大会があり、上位の学校は市大会、州大会まで進出する。1年を秋・冬・春の3つの季節に分けて種目を決めているので、チームができてから州大会まで、長くても3か月くらいしか活動しない。つまり、毎年違うスポーツをできるのはもちろん、1年の間でも複数のスポーツを経験することができるのだ。

少年野球でも、キャッチボールや素振り、一年中まず練習して、うまくならなければ試合に出る回数も少ない、スポーツとしての日本の野球。ルールを甘くして、とにかく楽しむ、娯楽としてのカナダのベースボール。どちらも、子供にとって、すばらしい経験だが、小さいうちにいろいろなスポーツの楽しさをより経験できるのは、トロントの仕組みのような気がする。

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