カナダ厳寒の地に人権博物館がオープン

文・斎藤文栄

 

カナダの真ん中、バンクーバーとトロントのちょうど中間くらいにあるマニトバ州の州都ウィニペグをご存知だろうか。寒い国というイメージのあるカナダでも、ウィニペグは特に寒いところとして有名なところだ。

私は連れ合いがウィニペグ出身ということもあり、よくクリスマス・シーズンにウィニペグを訪れる。もうマイナス25度くらいでは怖気付かなくなったが、1年前に行った時には公式に北極よりも寒い日があったと言われ、さすがに驚いた。その年の大晦日には体感温度がマイナス50度(!)にもなると言われ、さすがに年越しを記念して打ち上げられる花火は見に行かなかった。(行けなかったという方が正解か)

厳寒の地に2014年初冬、首都オタワ以外では初の国立博物館となる「Canadian Museum of Human Rightsカナダ国立人権博物館」がフルオープンした。

なぜウィニペグなのか。

街の中心部近く、歴史保存地区の隣に建てられた人権博物館。真ん中の突き出ているところは「希望の塔」という名の展望室になっており、ウィニペグ市街の様子が一望できる。

街の中心部近く、歴史保存地区の隣に建てられた人権博物館。真ん中の突き出ているところは「希望の塔」という名の展望室になっており、ウィニペグ市街の様子が一望できる。

博物館構想を打ち出した実業家イギー・アスパー氏がウィニペグ出身であり、その意思を継ぎ、建設に巨額の出資をしたアスパー財団がウィニペグにあるからというのが理由だが、もともとウィニペグには先住民の豊かな歴史や、女性運動、労働運動も盛んだったという背景もあり、人権博物館を建てるにふさわしい土地柄だとも言える。

私が訪れたのは、昨年9月、まだフルオープン前で一部だけ公開していた時だったが、カナダにおける先住民の辿ってきた歴史を知ることができ、またビデオで色々な人権問題を知ることができたりと、とても楽しむことができた。

フルオープンした後に訪れた人に感想を聞いた時も、人権問題に関する最高裁判例をクイズ形式で学べるようになっている展示があり、判例も微妙な問題を扱ったものだったので、答えを出すまでにかなり考えさせられ良い学習になったと言っていた。

ただ、人権団体の中には、博物館が幅広い人権問題を十分にカバーしていないとしてボイコットを呼びかけたところもあったという。このサイトで前にも取り上げた先住民女性の殺害・失踪問題に取り組む団体や、パレスチナ紛争などの問題に取り組む団体などである。また「国立」であることから、展示内容が政治的になり過ぎないようにとの規制が働いているとの懸念も上がっている。

人権博物館の真の評価はこれからの展示にかかっている。 時の政権など権力の介入を退け、カナダ、そして世界中で、人々がどのように権利を獲得していったか、また獲得するために闘っているか、果敢に取り上げていってほしいと思う。

ウィニペグを厳寒期に訪れるのも一興だが、夏のウィニペグは(蚊が少し多いという欠点はあるものの)自然が豊かなだけではなく、フォークフェスティバルなど芸術的に楽しめる催し物も多い。人権博物館を見るためにウィニペグへ行くという人はあまりいないかもしれないが、ウィニペグに行く機会があればぜひ訪れてほしい。

カナダ国立人権博物館の公式サイト
https://humanrights.ca

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。