トロント「語りの会」公演 3月21日開催

文・ 田中裕介

 

「物語せよと言え。我なんじの耳を魅せる話をせむ」(シェークスピア)

20年以上続いてきた手作りの味の「語りの会」。今年は3月21日、ちょうど春めいた頃に開かれます。是非ともご家族、友人といらしてください。

1994年に始まったこの会、発端はトロント在住の移住者の親たち、日本語の教師たち10数人が集まって、次世代に日本語と文化を継承させたい、カナダ社会にもっと日本の民話、童話を広めたいという思いでした。

たまたま筆者(田中)は、日系団体NAJCの会館でコミュニティ新聞の編集をしており、 館内小ホールを自由に使えることもあって、実行委員を押し付けられました。仕方なく一回だけのつもりでかかわったのです。ところが、自分で演じてみると、意外と面白い。下手ながら、いや、下手だからこそ、もうちょっと巧く演じたいと繰り替えしているうちに、22年目を迎えました。ですから、思いはいつも、The best is yet to comeです。

今年のテーマは All Aboard! Get on the Katari Story Time Machine(語りタイムマシーンに乗って)と題して、古代から現在まで往ったり来たりのお話のメリーゴーラウンド。

*「日本の昔話」 (柳田國男監修)から「牛方山姥 」と 「宝の簑」

「山姥」(語り:ジャック・ハワード)は、日本女性はおしとやか、という幻想を吹き飛ばして暴れ回ります。ラフカディオ・ハーンが「美魔女」に脚色した「雪女」の仮面を剥いだら、スッピンの大和撫子が包丁振り回して飛び出してきたのです 。すわっ、逃げろ!です。

)「笑顔の贈り物」坂本九写真集(角川書店発行)

「笑顔の贈り物」坂本九写真集(角川書店発行)

*坂本九物語 −見上げてごらん、夜のスキヤキ

日本の歌で、世界で一番有名な曲は何? それは「スキヤキ」こと「上を向いて歩こう」です。この楽曲を、1963年に米国ヒットチャートNO1にしたのが坂本九、その人です。では、九ちゃんの魅力は? 60年当時、並みいるハンサムでイカス歌手に対する、アンチのイメージでデヴューした庶民派の九ちゃんは、一夜にして時代の寵児、「シンデレラボーイ」になりました。

でも、一方で恵まれない子供たちに対する目線は天性のものがありました。1979年、世界で初めてという手話を取り入れた曲「そして思い出」は、彼のアイデアに永六輔と中村八代が協力して創り上げた楽曲です。そして、1985年、史上最悪の飛行機事故の犠牲となりました。今年は彼の30周忌です。九ちゃんの唄を皆で歌い継いで供養にしましょう。

Seung Ah.2013

Seung Ah Kim 2013年3月、韓国伝統芸パンソリをトロントで紹介してくれました。

*道成寺 安珍と清姫

10世紀以来伝わる「安珍と清姫」伝説に取材し、その続編ともいえる「道成寺」が15世紀に能舞台として完成されました。今回は、「安珍と清姫」伝説と「道成寺」を組み合わせて、更に701年の道成寺建立にまつわる髪長姫伝説も加味して、 田中が脚色し英語のストーリーにしてみました。

熊野参りをする修験者(安珍)と、彼に恋焦がれた若い娘(清姫)の関係は、そのまま密教という大陸伝来の厳しい宗教と、戒律はないに等しい太陽神を仰ぐ日本固有の文化という、異質なもの同士の惹かれ合いとせめぎ合いでした。当時の異文化間の軋轢は、寺の鐘さえ溶かす程に熱かったということかもしれません。その焰立つ刹那に、人々の想像力がこの物語を生み出したように思えます。語り手は、韓国での英語語りの創始者であり、伝統芸パンソリの語りもするスンガー・キム。2009年以来、トロントとソウルで「語りの会」と何度も共演してきました。

*アテルイ物語エミシのラスト・スタンド

9世紀以来、東北に語り継がれてきた「阿弖流為の物語」は、将軍坂上田村麻呂率いる朝廷軍に挑んだ、蝦夷軍の指導者アテルイの壮絶な生と死の物語。岩手出身の菊池幸工が、自ら脚色して語ります。

四季(秋、冬、春,夏)から春と夏の情景

創作マイム・ダンスの山本のりこが、自作品「四季」から春(蝶)と夏(蓮)の情景を演じます。

*唄「花子とアン」、「麦の唄」、童謡「七つの子」

昨年、日本で人気を博したTVドラマ「花子とアン」と「マッサン」のテーマ曲。「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子のライフストーリーは、女性として自立しようとする意思に溢れていました。それは、ちょうどモンゴメリーの小説の中のアンに憧れた、日本じゅうの女の子たちの理想の女性像を体現していたようにも見えます。 また、野口雨情作詞の童謡「七つの子」は、「カワイイ、カワイイ」と鳴いて家路を急ぐ母カラスの子供に対する思いが切なく伝わってきます 。

*司会はナタリー・ヴァション。毎年、日本の思い出などを語ってくれてきたナタリーですが、今回は一休みして、MCを担当します。

尚、例年、開催日の数日前には満席になります。 予約はお早めに。http://jftor.org/event/katari-2015/

2015

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