カナダで生理用品への課税がなくなる日 

文     斎藤文栄

seiri-yohin「タンポン・タックスがなくなる!」

初めて聞いたときはなんとも過激に聞こえたが、カナダからタンポンを含めた生理用品への課税が撤廃されるという、女性にとっては嬉しいニュースが飛び込んできた。そもそも女性が購入する生活必需品である以上、生理用品への課税は必然的に女性差別的な性格をもつ。オーストラリアでも同様の動きがあるらしい。日本でもぜひ実施してほしいものだ。

私にとって、これが非常にタイムリーなニュースだったのは、つい最近、生理用品について改めて考える機会があったからだ。

先月、バングラデシュの首都ダッカで行われたアーバン・ヘルスに関する国際会議に参加した際、女性の生理に関するセッションがいくつか設けられていて、おや、と思った。国際会議で、まだ生理のような基本的なことが問題になっているのかと。

2年前に1,000人以上の死者を出した縫製工場崩落事故でも明らかになったように、バングラデシュには縫製工場が多く、そこで働く人々は多くが田舎から出稼ぎにきている18歳から35歳の女性で、トイレ休憩もろくにとれないような非常に劣悪な環境で働いている。 私が 縫製工場で働く人々のために活動しているAwaji Foundation という団体から聞いた話では、3割ほどは文字が読めず、健康に関する知識が乏しいのが特徴とのことだった。生理になると工場を休むか、あるいは不潔な布をナプキンとして使い皮膚炎を起こすかで、トレーニングなどを通じてまずは使い捨てナプキンを普及することが重要なミッションだという。生理用品を当たり前に使っている身にとって、バングラデシュの縫製工場で働く女性の現状は非常にショッキングに感じられた。

ところで、今年は国連にとって、非常に重要な年である。2000年に定められたミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)が終了するため、新たな目標として持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)  というものが9月の国連総会で採択されることになっている。

そのための交渉が今、国連本部のあるNYで行われているのだが、男女平等や保健、教育分野で最も交渉が難航しているのが、 セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ (Sexual and Reproductive Health and Rights)、そして包括的な性教育(Comprehensive Sexuality Education)に関する文言だ。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツというのは、平たく言えば、自分で自分の身体について知り、決定し、必要な医療へのアクセスを持ち、自分の身体を守ることができる権利、子どもを産むか産まないか、何人産むか、いつ産むかを自分で決める権利、およびそのための医療サービスを受ける権利のことである。反対派は、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関してはLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティの権利や中絶の権利を認めることになり、性教育に関しては行き過ぎた性教育が性交渉を活発化させることになると主張する。

オンタリオ州でも、新たに導入しようとしている性教育が過激すぎるとして何千という家庭が子どもを休校させる手段に出ている。しかし、学校で教えなくとも今時の子どもはどこからでも知識を得ることができる。せめて学校で正しい知識を教えるべきではないかと思う。学校で教えるのはあくまで知識であり、それをどう使うのか(使わないのか)は、家庭が責任を持てばいい。

もう15年以上前になるが、日本の女子高校生を対象に、性情報をどこで入手し、それがどのように性行動に結びついているのかという研究に参加したことがある。学校でちゃんとしたカリキュラムで性情報を学んだ高校生(男性がどういう状況で勃起するのかまで学ぶという!)と、学校で教えるのは簡単な性教育であとは自分で雑誌などから仕入れた知識しかない高校生を比べると、前者の方が自分の身体の使い方、いつ性交するのかしないのか、異性との付き合い方についてはるかにきちんとした考え方を身につけていた。

バングラデシュの縫製工場で働く女性も、せめて小学校で生理を含め自分の身体のことを学ぶことができたら、もう少し主体的に健康を考えられるようになるのではないかと思う。彼女たちは正しい性知識がないために、避妊方法にしても、得られる手段全て(例えばピルとIUD(子宮内避妊具)と注射)を一緒に試して具合が悪くなる場合もあるという。

そんなことを考えつつ、Facebookにバングラデシュで見聞きしたことをアップしたところ、友人が1年前のものだけど、とネパールの少女に関する記事を送ってくれた。

そこではネパールの山間部で暮らす少女が、生理の間は不浄な存在として家族、地域社会から隔離され、食べ物もお米以外与えられないという記事が掲載されていた。にわかに数年前、ネパールのやはり田舎の教育支援をしている日本人から同じ話を聞いたことを思い出した。その人は、少女がどうも学校を休みがちなのでおかしいなと思って調べてみたら、生理の間は小屋に隔離されるために学校に行けないことがわかり、慌てて生理用品を支援するようにしたということを話していた。

カナダで生理用品への課税がなくなる日、世界にはまだ生理用品を知らずに暮らしている多くの少女がいる。

<参考>

タンポン・タックスの記事

http://www.cbc.ca/news/politics/tampon-tax-will-end-july-1-1.3091533

オンタリオ州性教育に関する記事

http://www.cbc.ca/news/canada/toronto/ontario-sex-ed-curriculum-5-things-to-know-1.3059951

ネパールの少女の記事

http://jezebel.com/what-life-is-like-when-getting-your-period-means-you-ar-1542273510

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