支援が一か所にまとまった新機関「暴力の被害者治療シェルター」 ~BC州で初・ビクトリア市に設立~

文 ・サンダース宮松敬子
 
 

世の中には理不尽なことが山のようにあるが、特に女性側から見て憤懣やるかたない思いを感じるのは、男性による女性への暴力である。もちろん女性から男性に対して起こることも決して珍しいことでない事は周知の通りだが、やはり身体的に力のある男性からの比率は大きい。

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サイバーいじめで自殺した15歳の女の子が、「自殺した有名人」として取り沙汰されたことを掲載する新聞

また最近はネットの発達で言葉による暴力も後を絶たず、カナダでもBC 州の15歳の女の子が、サイバー攻撃のいじめによって2012年10月に自殺を図った。つい最近のニュースでは、主に自殺した有名人を採り上げたフィルム「Suicide Squad」のポスターに彼女の写真や名前が載っていることが分かり、母親が涙ながらに訴えている。

そうした数々の暴力の中でも特に忌まわしさを禁じ得ないのは、「ファミリー」という小さな集団の中で起こる「家庭内暴力」だ。そこには性暴力が絡むことも多いが、加害者の常套手段は相手を恐怖に落とし入れ、身体的、精神的に身動きの取れない状態にさせてしまう。

そんな被害に遭った犠牲者たちが避難できる場所は、一般的に「シェルター」と呼ばれるが、今年2月末ビクトリア市に画期的な公的な機関が設立された。広いカナダのこと、或いは他州にはすでに設置されている所もあるのかもしれないが、BC州では初めての機関である。

何が画期的かと言えば、今までは(性的)虐待などの暴力によって怪我を負わされた場合、まず病院に行って手当を受け、次に警察に廻されて事情徴収され、その後然るべき場所でのカウンセリングを受けるというのが手順であった。

それが当機関の設立によって、医療、警察、カンセリングが連携し、この過程を一か所で受けることが来るようになったのである。とは言え、どのようなサービスを受けたいかは、言うまでもなく、本人次第であるもののこの半年ですでに27人が治療を受けた。

中でも子供の性的被害者の場合、一貫したサービスを一つの場所で受けられるのは、精神的な面で計り知れない成果を挙げているという。また記録によると、子供を対象にした性的事件を起こした犯罪者の自殺率は高いとのことで、被害者に対する迅速なサービスが行われることで、自殺者の原因が何であったかを突き止めることの手助けにもなるとの報告がある。

特筆すべきは、このサービス機関が出来たものの、今まであったVictoria Abuse Prevention and Counselling Centre や Victoria Sexual Assault Centerが無くなったわけではなく、両機関とも従来通りの運営を行っていることである。これは、それ程までにこの手の事件が多いことを意味するのか、或いは、被害者を手厚く保護することを心掛けているのかは定かでない。だがいずれにしても被害者救済に力を入れていることは見て取れる。

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ブリティッシュコロンビア州の首相クリスティー・クラーク

付随だが、6月初旬にChristy Clark BC州首相が35年前の13歳の時、アルバイトに出かける道すがら、見知らぬ男性に力ずくで藪の中に連れ込まれアタックされた経験を公表した。間一髪で被害者にはならなかったものの、今まで誰にも一切語らなかったという子供時代の悪夢を公にしたのは、現在BC州のグリーン党が推し進める「The Sexual Violence and Misconduct Policy Act」の立案の法制化をサポートすることを目的とした為であった。

 

勇気ある行動に拍手を送りたい。

 

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