麻薬インジェクション・センター(麻薬管理投与施設) ビクトリアに2カ所オープンの予定
文・サンダース宮松敬子
今から13年前の2003年に、バンクーバー市のEastサイド(ホームレスなどが多い地域)に、スーパーバイザーが常駐する「麻薬インジェクションセンター」が開設された。(http://www.vch.ca/your-health/health-topics/supervised-injection/supervised-injection)
このニュースを聞いた時、私は非常に驚くと同時に「一体どんな経緯を経ての結論なのだろうか?」と強い興味が湧いたのを覚えている。
大都会トロントに先駆けてのことであり、カナダは勿論のこと、北米大陸では初めての試みであった。当然ながら賛否両論が渦巻き、多くは「麻薬の使用を奨励することになりかねない」と声を大にして反対した。
しかしそんな反論をよそに、今バンクーバーには2ヵ所が稼働しており、統計はないものの過剰摂取による死亡率が減少したと報告されている。
それから13年後の今、今度はビクトリア市に同等の仮施設が来年早々2ヵ所オープンする予定となった。開設の理由は2003年と同じで「こうした施設があることは蔓延の防止に繋がる」というのだ。
場所はいずれもダウンタウンで、ホームレスの援護センターとしてビクトリアではとみに名を馳せている「Our Place Society」と、「テント・シティ」という、この夏までホームレス200人ほどがコミュニティを作って陣取った場所(州裁判所の一角にある公園)の近くである。
BC州の保険大臣は、申請の詳細を連邦政府が素早く受け入れることを要望している。それによって開設がよりスムーズになると言い、こうしたアクションを通して漸進的なアプローチをする以外に、現時点の深刻な薬物問題を反転させる方法はない、と断言する。
現在、連邦政府のヘルス・カナダが決めている26の強力なドラッグ規約法を、BC州政府は同施設を運営するにあたり、法案C-37を提出し条例を5つにまで軽減することを希望している。
主な項目は:
① 犯罪率に影響をおよぼす領域
② ローカル地域の状況による指針
③ 規制に沿って設立された施設の運営
④ 施設維持に可能な情報の提供
⑤ コミュニテイの理解を得るためのサポート
BC州の今年1月から10月までの過剰摂取による死亡率は622人で、内60%の死者は強力な合成オピオイドのフェンタル(fentanyl)によるものである。
そのため、国外から入るこの薬物のピルやカプセルを作製する器材の輸入には、今後更なる規制を設け厳重に取り締まるとことも条約に盛り込むことを要望している。
こうした一連の動きに世論はどう反応しているかと言えば、蔓延問題は誰もが解決すべき重要事項とは思っているものの、やはり賛否両論である。
だが一番多く聞かれるのは、その資金を健康保険に廻してカウンセリングが出来る場所をもっと増設し、薬物患者がよりアクセスし易いようにすべきではないか、との意見である。