日本でのトランプ氏への反応をみて

文・鈴木典子

昨年の大統領選で、トランプ氏が大勢の予想を裏切って邁進を続けていたころから、日本のメディアでも、トランプ氏の言動を批判的に報道してきている。大統領に選ばれた後も、トーンはおおむね批判的だが、積極的に対応や戦略を論じることが少ないことに、一抹の不安を感じる。日本の野党が与党をただただ批判する姿勢に通じるものがあるように思う

では、一般人はどのように受け止めているのだろうか。アメリカ国内はもちろん、隣接するカナダでも、多くの人が有名・無名を問わず、トランプ氏の移民や女性に対する差別的政策に、反対のデモ行進を繰り広げているようだが、日本ではほとんど見受けられない。一度、日比谷~六本木で、アメリカ人を中心に200人くらいのデモが報じられたが、私が気づいたのはそのくらいである。日本人にとって、アメリカの大統領の政策は、対岸の火事なのだろうか。それとも、デモそのものが、日本人の風土に合わないのだろうか(昔は、全共闘とか、安保闘争とか、たくさんやっていた記憶があるけれど……)。それとも、日本ではデモは報道されないという噂が真実なのだろうか。

そんなことを考えていると、面白いブログと動画を発見した。「海外はトランプ大統領をどうとらえているか」というテーマで日本人が作ったものなのだが、その中に、日本人をインタビューした動画がある。

https://www.youtube.com/watch?v=7R0yuFmql-c

 

 

この動画を見て、日本人は捨てたものではない、と思わされた。ここに出てくる日本人は、インタビュー対象者の中からかなり賢い人が選ばれたのではあろうが、それぞれの人が自分の意見をきちんと表明していて、立派なものである。

トランプ氏は実業家で、演技をしているのだという人もいる。America Firstと自国優先を打ち出したこと、単純で分かりやすいメッセージを、若者にも受け入れられやすいSNS系のメディアで発信することなどは、戦略として、優れていると思う。アメリカは、世界一の経済大国として世界の動きに責任がある、というのも事実だが、不況や失業にあえぎ、不法移民に職を脅かされるなど、今のアメリカは、大統領が「なりふり構わず」保護主義的にならざるを得ないほど、疲弊しているのだろう。この記事は、とても参考になった。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48143

私の愛するカナダは、アメリカの隣国として、移民がなだれこんで来るし、NAFTA再交渉、TPPからのアメリカの撤退などで、影響を受けざるを得ない。若いイケメンの二世首相は、なりふり構わずCanada Firstなどとは言えないだろう。しかし、貿易相を外相に適用したり、移民受け入れをアピールしたり、トランプ氏の政策に素早く対応し、利用するところには感心した。

法的なビザを持っていても米国に入国できないような事態は、混乱している時期だけと期待するが、カナダやアメリカに移民しようという日本人に影響が出ないことを願う。

日本の政府も、優れた実業家アドバイザーにして対抗しないと、太刀打ちできないのではないだろうか。個人的には、トランプ氏が叩く人は、トランプ氏が恐れている人だろうから、やはりトヨタあたりだと思うが、いかがだろう。日本の何党の誰が首相になっても、大して変わらない政治と違い、大統領が変わればすぐに根本的な政策が変わるアメリカなので、日本も駐留米軍の撤退もあり得ることとして、全党あげて、対応策を検討してもらいたいものだ。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。