カナダは寒いか?
文・斎藤文栄
カナダは寒い、と誰もが言うが、実はそんなに寒くないと思っている。いや、客観的には確かに気温だけ見ると寒いところが多い。しかし、私にとって、カナダの冬は穏やかで、過ごしやすい。
この冬、英国のロンドン、カナダのウィニペグとトロント、日本の新潟、東京と5都市を駆け足で短期間ずつ滞在した。私の感覚的には、冬の厳しさは、新潟、ロンドン、離れてウィニペグ、トロント、東京という順番だ。

カナダ・ウィニペグ - 気温マイナス26度だが青空が広がっている
以前も書いたのだが、ウィニペグは、カナダの主要都市の中で、もっともマイナス気温の日が多く、 クリスマスに行くと言うと「可哀想に……」とカナダ人からも同情される極寒の地というイメージのある都市である。ところが、実際に行ってみると、確かに気温はマイナス20度位の日が続くことがあっても、空は真っ青で、日中は眩しいばかりの光が射している。また部屋はセントラル・ヒーティングで、暖かくとても過ごしやすい。晴れているので、 スケート、スノーシュー歩き、クロスカントリー・スキー、子どもたちはソリ遊び(カナダではtobogganingという)と野外活動も盛んだ。マイナス10度位だとジョギングも冷たい空気がかえって気持ちが良く感じられる。(この冬、マイナス20度下でジョギングを試したらさすがに息が苦しく、自然に出てきた涙も凍ってしまうほどだった。気分は悪くなかったが、お勧めはしない……)
トロントも、ウィニペグほどではないが、青空が多く冬も過ごしやすい。この空の青さは、私が始めて故郷の新潟から出て、東京で過ごした冬の記憶を思い起こさせる。東京のあまりの空の青さに、こんな冬もあるのかと驚いたものだ。
さて、英国ロンドンである。ロンドンの冬も、新潟の冬に似ている。灰色の空、そして英語で “damp cold” と呼ばれる、骨の髄まで寒さが染み込むような湿った寒さが特徴的だ。おまけに古い家が多いので、建物の断熱がしっかりしておらず、外よりも部屋の中が寒いくらいだ。ロンドンに住んでいる友人は「この冷蔵庫のような寒さが素敵!」とマゾ的感覚を楽しんでいる。

英国・ロンドン – 冬は曇り空の日が多い
この寒さの感覚の違いについて、1年前のThe Globe and Mail 紙にも”Is damp cold really the worst?” との検証記事が掲載されているが、この記事も私と似たような結論に行き着いている。人の感覚はそう違わないものか。http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/fitness/is-damp-cold-really-the-worst/article28346087/
カナダの冬が寒くて敬遠している人は、ぜひ一度実際に過ごしてみたらいいと思う。意外にあなたが今住んでいるところよりも暖かいかもしれない。もちろん、しっかりしたジャケットや靴下、帽子と手袋さえあればの話だけれど。