カナダの新しい顔と古い顔の間で

文 ・ 斎藤文栄

先週、カナダの新しい総督として宇宙飛行士であったジュリー・パイエット(Julie Payette)さんが議会で就任演説を行った。

IMG_6164カナダは英国連邦の一員であるため、君主であるエリザベス女王の代理として「総督」を置いている。任期は5年で、時の首相の助言により女王が任命する。国の代表として外交も行い、議会を収集し、開会演説を やり、また法案に女王の裁可を与え法律にするなどの責任を負っている。(*1)

今までの総督は、憲法学者のデービッド・ジョンソン氏。その前は難民としてカナダに来て、その後ジャーナリストになったミカエル・ジャンさんなど、過去にも様々な経歴の人が総督に任命されている。今回は、建国150周年や国連総会などのスピーチで折りに触れ先住民について語っているトルドー首相だけに、初めて先住民が指名されるのではないかと憶測された。だが、彼らの中には、象徴的な存在でしかない総督に先住民を任命しても、実際に自分たちの課題が解決されるわけでないのだから、むしろそんなことで誤魔かすのでなく、政府には今ある課題—解決の遅れる先住民女性の殺人・失踪に関する調査などに取り組んでほしい。実際に地位が向上したら、その際に初めて先住民を任命してほしいとの声を聞く。(*2)

結局、カナダで2人目の女性宇宙飛行士であり、初めて国際宇宙ステーションで働いた経験を持つ、ジュリー・パイエットさんが選ばれた。彼女は就任演説で、いかにも宇宙飛行士らしく「私たちは皆、地球というスペースシップの乗組員であり、共に力を合わせれば山をも動かすことができ、気候変動、移民、核拡散、貧困、人口増加という地球規模の課題に取り組むことができる」と大きな視野から就任演説を行った。総督に政治的な力はないかもしれないが、彼女のそのスピーチからは、カナダがこれらの問題にかける意欲を感じることができた。

ところでG20の参加国の中で、独自の君主を持たないのはオーストラリアとカナダだけであるが、オーストラリアでは何度となく君主制の是非が問題となっているのに対し、カナダでは不思議と大きな議論となったことはないように思う。

今夏に行われた世論調査によれば、エリザベス女王が亡くなった場合、立憲君主制を廃止すべきだと答えているのは43%、存続支持派が41%で、両者は拮抗している。(*3)

現在のカナダにはふさわしくない時代遅れの制度であると考えている人も多いのだろうが、改めて立憲君主制を問い直そうという気運は盛り上がらないように感じる。世論調査で聞かれればそれなりに答えるが、大部分は無関心というのが本当のところだろう。

カナダでも未だに人気の高いエリザベス女王が在位の間は、少なくとも立憲君主制の是非が議論されることはないのかもしれないが、意外に、この制度が見直されるのもそう遠くはないような気もする。その時、カナダはどのような選択をするのだろうか。君主制は見直されても、パイエットさんやミカエル・ジャンさんのような多様なバックグランドを持つリベラルな視野を持った女性が象徴的な君主として存在するというのは悪くない。君主制が見直される時、総督はどうなってしまうのか、興味はつきない。

  1. カナダ総督の役割と責任 http://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/bilateral_relations_bilaterales/gg.aspx?lang=jpn
  2. OPINION:Canada wasn’t — and isn’t — ready for an Indigenous governor general http://www.cbc.ca/news/opinion/indigenous-governor-general-1.4216592
  3. Forum Research, Canada Divided on the Monarchy, http://poll.forumresearch.com/post/2774/monarchy-august-2017/

 

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