国会議員の資質とは
文・サンダース宮松敬子
「あの人がまあ似合うのは、イタリアのボルサリーノ会社の作る中折れソフト帽だけだ」と揶揄されている日本の麻生副総理兼財務大臣。2018年も一連の言動や認識の浅はかなことに、驚かされっぱなしの一年であった。
もしも政治家だの実業家だのの、そうそうたる家系のバックグランドがなければ、ここまで政治の世界で生き延びられないであろうとは多くの人の弁である。
その麻生氏が今年放った数々の暴言の中の最たるものは、「セクハラ罪と言うのはない」と「もしかしたらハメられたのかもしれない」という言葉であった。説明するまでもなく、これは福田淳一前財務次官の「胸触ってもいい?」「手縛っていい?」など、女性記者にセクハラに該当する信じられない言葉を発して大きな問題になった時、彼をかばう積りで麻生氏が発したコメントだ。
まさに、ほとんど男ばかりの集団である日本の政治の世界に生きてきたことを証明する想像を絶する無知と、先進国では決して通じない国際感覚のなさには心底呆れる。余りにも恥ずかしいとしか言いようがない。
どんな些細なことでも、情報が瞬時に世界を駆け巡るネット時代の今は、例えコメントが日本語であってもすぐに翻訳されて世界中に流れる。
海外で生活する者には「日本ではあんな事を平気で言う人が副総理や財務大臣を務められるの?」とこちらの人に聞かれないかとヒヤヒヤしたが、言うまでもなくそれが現実であることは認めなければならない。
もっとも何処かの国では、得意なのはツィッターだけで知能程度は16歳等と言われ、行き当たりばったりの政策を展開。挙句にGoogleでIdiot(馬鹿)と打てば当男性が出てくる人でさえ一国の大統領になれるところをみると、何処も政治家なんて似たり寄ったりか・・・と諦めに似た思いが湧く。
振り返って「カナダの政治家は?」と見ると、ここにも清廉潔白とは程遠い、目や耳を覆いたくなるある議員の信じられない行動が11月初旬に明るみに出た。
その人の名は保守党の重鎮であるTony Clement(トニー・クレメント)(52)議員。今までに厚生大臣、産業大臣、予算庁長官など数々の要職を歴任した人である。彼は元々SNSのヘビーユーザーであることは周知だったようだが、単にツイッターを送るだけではなく、女性に対してセクスティング(Sexting-卑猥なメッセージ、写真、動画などを送信)を行なっていたことが世間に知れ渡ったのである。
彼の弁によると、最近ある女性と「合意の上で」セクスティングを行ったところ、「もしその画像を公表されたくなかったら5万ユーロを払うように」と脅されたため、保守党のAndrew Scheer(アンドリュー・シーア)党首(39)に相談したと言う。それを受けて国家警察(RCMP)が調査したところ、恐喝が事実であることが判明したのだ。
ところが事はそれだけでは済まず、更なる詳細が明らかになるほどに、彼は女性が一人で写っているインスタグラムに『いいね』を送る常習犯であることも明らかになった。加えて女性とのやり取りが継続されると「貴女は自分が連絡をする唯一人の女性であり、この事は他言しないで欲しい」とか「貴女は本当に素晴らしい。貴女がいなければ僕はどんなにか寂しいだろう」などのメッセージを送り、親密になるに従い性的な画像なども送っていたと言う。
他にも多くの女性にネット上で付きまとい、連絡をブロックした女性は多かったようだ。彼のインスタグラムはまるで「デート・サイト」のようだと言う女性もいて、20~25,6歳のカナダ人女性で、肩までの長い髪が彼の好みであると証言する。
しかしこんな醜聞が飛び交っても政界での最終的な立場は、保守党の各種幹部会の職は辞任したものの、無所属として下院議員として留まることになった。どんな暴言を吐こうとも安倍首相の庇護のもと、辞任などどこ吹く風の麻生氏の立場と何やら共通点があり、政界の摩訶不思議さを感じないではいられない。
それにしてもクレメント議員のような事件が明るみに出た時、一番傷つき恥ずかしい思いをするのは、配偶者や子供たちではなかろうか。いち早く彼のWikipediaには「Sexting scandal」の欄が加筆されている。
彼には3人の子供がいるが、弁護士で作家である妻、Lynne Golding(リン・ゴールディング)は「家族にとって非常に難しいこの時期に理解を示して欲しい」「彼は(更生のため)の助けを得るのに必要な措置を取っている」とのステートメントを発表した。
https://www.mymuskokanow.com/81369/lynne-golding-mp-clements-wife-releases-statement/
再度有権者の信頼を得るには、今後大変な努力を要求されるだろう。
どの国においても、政治家の資質とは一体何だろうかと考えさせられる事件である。