青少年野球事情~日本とカナダの違い:高校野球の投球数(その3):Baseball Mom 繁盛記(7)

文・鈴木典子

2019年9月20日、日本高校野球連盟(高野連)が設けた「投手の障害予防に関する有識者会議」が高野連理事会に提出する答申に、「1週間で500球」「3連投(3日続けて投球する)の禁止」の投球制限を盛り込むことを決めた。

対象は春夏の甲子園大会(全国高校野球選手権大会)、地方大会が含まれ、軟式の公式戦にも適用される。来春の選抜高校野球大会から適用され、3年間を試行期間としてガイドライン的に位置付け、期間中にデータを収集して制度を検証する予定だ。

baseball2014年9月19日付2019年2月1日付の私の記事 でも投球制限の話を書いた。2018年の夏の甲子園で初めて「タイブレーク」制度が採用され、その後の12月に、新潟県高校野球連盟が、全国で初めて県大会で投手の投球数を1試合につき1人100球に制限することを発表した。この決定は高野連の求めに応じて実施が見送られたが、高野連は4月に上記会議を発足させ、投球制限の要否などを議論しているのだ。

2月の記事では1月に発表されたBaseball Ontario(オンタリオ野球連盟)のArm Care Rule 2020を紹介したが、米国ではMLB(メジャーリーグ)と米国野球連盟が2014年にピッチスマート(注1)という18歳以下のアマチュア投手を対象にしたガイドラインを発表している。このガイドラインは米国以外にも、中南米や欧州で導入されているそうだ。

これらのガイドラインと日本の答申との違いは、一日の投球数を制限するだけでなく、一定以上投げたら1日以上の休養を取るよう定めているところだ。日本の有識者や野球関係者は、投球数が本当に投手の腕に影響があるかデータが無いと言うが、筋肉疲労でも体の疲労でも、休ませることが何よりも怪我や病気の予防や治療の基本であることは自明だ。日本では中学までは軟式野球が主流で体格も欧米人とは違うため、カナダや米国の基準がそのままはあてはまらないだろうが、参考にもしないのはなぜだろう。

私が思い付くこととしては、日本は多くの大会が一度負けたら終わりのトーナメント制のため、信頼できるエース投手始めレギュラー選手に頼りがちであること、ほとんどの選手がポジション(どこの守備につくか)が1つに固定されていて、大会ごとに登録選手が決められ、レギュラーの入れ替わりも少ないこと、更には高校野球生活において、部活は3学年一緒で、低学年は下積み、3年になってやっとレギュラーになれるという、「年功序列」の慣習がまだまだ主流であること、自分のポジションを守り抜く、特に投手は、先発完投できることが最も優れた選手だという精神性、倒れても体を壊しても投げきれれば本望というような根性論などの日本ならではの条件が影響していると思う。

どんな選手や勝ち方が良いのか、野球とは、部活とはこういうものだ、という社会の考え方が変わらなければ、投球制限は理解されない。今年の夏の岩手大会で、時速160キロというプロ投手でも出せない豪速球を投げる大船渡高校の佐々木選手を、決勝に登板させず準優勝に終わったとき、学校には監督を責める電話が鳴り止まなかったという。甲子園で優勝することがゴールで、高三で引退したらもう野球はしない、ではなく、野球が一生楽しくできるものになるのはいつのことだろう。

注1:ピッチスマート(Pitch smart):
http://m.mlb.com/pitchsmart/pitching-guidelines

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