大型クルーズ船賛否

文・サンダース宮松敬子

ブリティッシュ・コロンビア(BC)州のクルーズ船事情

カナダの西海岸に位置するBC州の州都ビクトリア市は、バンクーバー・アイランドと呼ばれる島にある。本土とはジョージア海峡によって隔てられており、飛行機なら30分、フェリーでは1時間半かかる。南北に長い島は、この海峡側以外は太平洋に面した外房になる。

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Ogden Pointの埠頭

そんな地の利の良さが、外国からの大型クルーズ船の停泊に適しているため、島の南端にあるOgden Pointと呼ばれる埠頭に多数寄港する。シーズンはGarden Cityの名に恥じない町が、花の盛りを迎える4月から秋の色が濃くなる9月末までの半年間。だが時には、10月末頃の季節はずれに一隻ポツンと来港することもある。

港湾の停泊料が高いため、大方の船は夕方から夜の遅い時間に到着し、翌日の午後か遅くとも夕日がさす頃には出航する。長居はしないため回転は早いが、こぢんまりとしたビクトリア市のダウンタウンはこの時期観光客で溢れ返る。

滞在時間は短いとは言え、なにしろ一隻で2000~3000人もの船客を運ぶとあれば、同じ時間に2,3隻も停泊すればその数たるや大変なものである。

2018年度のクルーズ船による収支決算を見ると、250隻が寄港し、64万人の船客と26万人の乗組員が立ち寄り、それによって地域にもたらした経済効果は一億3千万ドルであったと報告されている。

大きな数字は耳に聞こえはいいが、クルーズ船は上陸後のツアーもセット形式なことが多いため、果たして地元の個々のビジネスがどれ程潤っているかは不透明である。とは言え、他にこれといった産業のない市にとっては、ツーリズムが大きな収入源。夏場にクルーズ客で賑わうのは嬉しいことながら、それに比例して問題も浮上することは避けられない。

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下船する客を待つ観光バス

一隻の停泊時間は長くないが、埠頭に横付けされている間もエンジンは常に稼働しているため、当然ながら温室効果ガスの放出が大きな問題になっている。その量は10年程前から比べると20%近くも上昇し1万2千トンにもなる。これは車にしたら、何と3241台分が排出するガス量に至適すると言う。

今世界中を掛け廻って活躍するスウェーデンの環境保護活動家、16歳のグレタ・トゥーンベリさんがこれを聞いたらどんな顔をするだろうか。眉間に皺を寄せ大人を睨みつけるがごとくの面立ちは、世界の環境問題を一気に引き受けているかのようだ。だがこれから生きて行く若者たちの、地球の将来を心配する彼女の気持ちは十分過ぎるほど分かる。

摩擦も多いクルーズ船

このクルーズ船の問題は、カナダに限ったことではない。

クルーズライン・インターナショナル協会(CLIA)の報告によるとこれは世界的な傾向で、この10年で旅行者数は70%も増加しており、去年は2850万人だったと言う。この数字の半分は北米からの参加者で、自然や異文化体験を売りにした企画に人気があるようだ。

また家族連れの場合は、子供のアクティビティは揃っているし、食べ物は常時有り余るほど用意されているため料理の心配はなく、親がリラックス出来るのが受けている。

だが先日高潮の影響で大被害を受けたイタリアのベニスでは、巨大な客船が景観を損ねると問題になっているし、スペインのマヨルカ島も砂浜の劣化が問題になっていると言う。

今後も勢いは止まらないであろう大型船の船旅は、その人気と並行して自然破壊の問題が絶えないことだろう。

追記:上記のOgden Point の港は今でこそクルーズ船で賑わっているが、1941年12月の真珠湾攻撃で開始された第二次世界大戦直後には、州政府によって日系カナダ人の漁師たちの船が強制的に集められ没収された場所である。

1945年の終戦後も彼らが戻ることを州政府は禁止し、東方面(トロントなど)に行くか、日本に帰るかを選択させた。禁止令が解除したのは終戦4年後の1949年であった。

もちろん77年後の今は、当時の面影は微塵もなく整備されているが、日系カナダ人にとっては苦い思い出の残る場所である。

 

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