北京+25:ジェンダー平等に向けて残るカナダの課題

文・斎藤文栄

2020年は『北京+25』ということで世界のフェミニスト達が盛り上がっている。この北京+25が何を指すかご存知だろうか。

これは1995年に北京で行われた第4回世界女性会議から25周年ということを指している。北京で行われた会議には世界中の人々と共に日本からも5000人以上の人が参加した。本会議は女性の人権、ジェンダー平等に関する包括的な国際文書である「北京行動綱領」を採択し、その後の各国のジェンダーの取り組み指針となっている。日本でもこの動きが男女共同参画社会基本法の制定につながり、その後の配偶者暴力禁止法制定への道筋をつけた。

25周年を記念して『Generation Equality』(平等を目指す全ての世代)というキャンペーンが立ち上がっており、今年9月の国連総会までの間に、ニューヨーク、メキシコ、パリで立て続けに国際的なイベントが行われる予定だ。現在の二極化する世界において、今年の数々のイベントでジェンダー平等に対する機運が盛り上がれば良いと期待している。

さて、第4回世界女性会議の後、国連加盟国は5年ごとに北京行動綱領の定めた項目に添った政府報告書を国連に提出することになっている。その政府報告書を見れば、各国が過去5年間にジェンダー平等を進めるためにどのような取り組みをしてきたか一目でわかる。

カナダの報告書では、フェミニストであると公言するトルドー 首相の下、様々なジェンダー平等への取り組みが紹介されている。例えば、内閣をジェンダーが均衡するように組んだことをはじめ、ジェンダー平等を促進する部署の創設、ジェンダーにどのような効果があるか評価を義務付けているジェンダー予算の導入、そして政策立案にGBA+(Gender-Based Analysis Plus)というジェンダーや多様性という分析を役立てるなどが挙げられる。トルドー 政権は、市民社会への支援にも熱心で、女性団体や先住民団体が、意識啓発でも、サービス提供でも重要な役割を果たすと考え、2018年から5年間で1億カナダドルを女性運動に拠出している。いずれの点も、日本と非常に異なるアプローチをとっていて興味深い。

しかし、どの国も完全にジェンダー平等を達成したところはないように、いくら首相が熱心だからといって、すぐにジェンダー平等が達成されるわけではなく、カナダにも様々なジェンダー課題が存在する。

2019年11月末にはアジア太平洋地域の北京+25準備会合がバンコクで開催された

こうした政府報告書には、いつも政府報告書に対抗するパラレル・レポートが市民社会から提出されるのが国際社会の傾向となっている。大概の政府はいつもポジティブな側面しか書かないので、政府報告書とともに、パラレル・レポートを見ると、その国のジェンダーの動向がより包括的にわかる仕組みになっている。

カナダの市民社会が出した報告書を見ると、このレポートをまとめたNGOや労組、専門家のグループも、政府の積極的な取り組みには敬意を評しつつも、依然として残る様々な課題について報告している。特に、多様なグループ間での格差について光をあてている点が特徴だ。

例えば、カナダのジェンダーギャップでいつも槍玉にあがる男女の賃金格差についても、レポートでは、OECD36カ国中カナダは31位であり、女性は男性賃金の82%しか稼いでいない。さらに、人種マイノリティのグループでは60%、そして先住民に注目すると57%しか稼いでいないという。すべてのグループの賃金が男性並みになれば、カナダ経済は今よりも430億カナダドルの利益を挙げることができるという。

ジェンダーに基づく暴力についても、先住民や障害を持つ女性、LGBTQI2Sの人々は暴力にさらされる危険性が高く、先住民女性は他のグループよりも12倍、白人女性に比べると16倍も失踪・殺人に遭う可能性が高い。また、警察に通報された女性を対象にした暴力事件の45%が障害を持つ女性が被害者になっているという報告は非常に興味深い。

カナダのレポートは『Unfinished Business』(やり残した課題)というタイトルがついている。やり残した課題にカナダがいかに取り組んでいくのか、注目していきたい。

カナダの市民社会がまとめたパラレルレポート
Unfinished Business: A Parallel Report on Canada’s Implementation of the Beijing Declaration and Platform for Action
https://www.policyalternatives.ca/publications/reports/unfinished-business

各国政府が提出したレポート
https://www.unwomen.org/en/csw/csw64-2020/preparations#national-level-reviews
(残念ながら日本は2020年2月16日現在で提出していない)

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