日本政府が行った「新型コロナウイルスの感染拡大防止と臨時休校要請」の波紋

文・野口洋美

2020年2月27日、安倍総理大臣が、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、小中高、並びに特別支援学校の臨時休校を全国に要請した。週明けの3月2日から春休みに入るまで休校とし、そのまま4月第2週の新年度まで事実上5週間の長期休校を各自治体に求めたのだ。

中国、武漢でのアウトブレイクから2ヶ月、韓国やイタリアでは死亡を含む症例が急増した。日本でも2月初旬から感染経路不明の発症が確認され始め、中旬には小学生の感染例も報告された。しかし、総理が下したこのあまりにも急な決断は、多くの国民を驚かせた。

「要請」を受けて、大半が寝耳に水の状態からバタバタと春休みまでの臨時休校を受け入れた中、これを見送った自治体もある。

島根県出雲市がその一つである。県内には新型コロナウイルスの感染確認がなく、また休校にした場合の教育面の影響や共働きの保護者に与える混乱を想定し、市内で感染者が確認されないかぎり休校しないと決定したのだ。

千葉市は、総理の要請した「春休みまで」には科学的根拠がなく、潜伏期間とされる2週間を小中高の臨時休校とする一方、特別支援学校は休校しないとした。さらに共働き世帯に対する救済措置として、低学年の生徒を学校で受け入れ、密集しないように高学年の教室も利用し教師の監督下で自習させるという。

日中保護者が家にいない児童を通常の就業時間、学校で受け入れることを決めた長野県飯田市は、「前例のないことで困惑している」と、全国の自治体の想いを代弁するコメントを残している。

唐突な要請に独自の信念や創意工夫で対応したのは、他の自治体も同じだろう。が、最終的に99%が休校要請を受け入れた。

2月下旬までの日本政府の対応は、後手後手に終わっていると酷評された。香港で下船した乗客の陽性判定を受け、クルーズ船の乗客乗員約3,400人を横浜港で船内隔離したことが、逆に船内感染につながったのではと批判された。さらに隔離期間を終え下船した乗客の中から新たな感染者が判明した顛末には、非難が殺到した。

臨時休校要請は、感染防止対策の構築に焦る総理の無茶振りで、「要請」と言う名の丸投げは、全国の自治体への責任転化であるとの声も少なくない。

一方、総理の要請を全面的に受け入れた神奈川県知事は、「国の大きな方針転換で唐突だったが、非常事態宣言と受け止め評価したい。休校の間、児童・生徒がどう過ごすか、皆で智恵をしぼらなければならない」と語った。

なるほど、この要請は、「全国レベルで感染拡大防止の重要さを認識する」という点で有効だったと言えるだろう。3月11日、WHOも新型コロナウイルス感染症の蔓延を「パンデミック」であると形容し理解を求めた。

異例の臨時休校が始まって2週間、日本では連日新たな感染者が確認され、3月9日には遅ればせながら中国、韓国からの入国制限が開始された。

アメリカでも別のクルーズ船内での感染など深刻なニュースが伝えられている。そして、3月11日、 イギリス以外のヨーロッパ26ヶ国からの外国人の入国停止を決定した。すでに行われている中国、イランからの入国禁止に加える予防対策だ。

政府レベルでの感染予防対策が進む中、民間レベルでの対策も盛んになっている。トロントに住む筆者の娘が、「3月から4月にかけて予定されていたニューヨーク、東京への出張が中止となった」と伝えてきた。 カナダへの再入国が制限されることを恐れた対応だという。バンコクに住む別の娘の職場では、国を問わず渡航を一切禁止している。どちらも、空港や機内など不特定多数が集まる場所を感染リスクと捉えている。

世界中で対策が進む中、安倍総理の要請した臨時休校は、感染リスクを回避しているのだろうか。 「不必要な外出は避けるように」と指導されているはずの子どもがめっきり増えた行楽地の様子を目の当たりにすると、全国一斉臨時休校の目的に首を傾げざるをえない。

「休校要請」の是非を問う答えは、まだしばらく出そうにない。

 

後記: 2020年3月13日、日本政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に「新型コロナウイルス感染症」を加える改正を可決した。これによって、3月14日から2年間、新型コロナウイルス感染防止を目的とした休校を「要請」から「強制」にすることが可能になった。

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