新型コロナウイルス(COVID-19)で変わる日常
文・空野優子
2020年3月に入って以降あっという間に世界中に広がった新型コロナウイルスの脅威は5月に入ってもまだ収まる気配がない。
ここトロントでは、春休みにあたるマーチブレイクに入る直前の3月12日に、オンタリオ政府が4月5日までの公立の全小中高学校の休校を決定したころから、次々と施設の閉鎖と人の移動の制限が発表された。感染者数の増加率は最近低下傾向にあるものの、外出制限を緩和できる状態になるまでにはまだ時間がかかるらしく、食材の買い出しと近所の散歩以外は家にこもる生活はまだしばらく続きそうだ。

看板には公園の中でも人との距離をあけるようにとある
ウイルスは人から人へ感染するため、感染拡大を減らすには、人の移動を制限し、人との接触を避けることが必要不可欠だというのはわかる。ただ、経済活動の大部分をシャットダウンする これらの対策は、一人一人の生活へはもちろん経済への影響がとても大きい。そこで連邦政府とオンタリオ州政府は、この緊急事態に対応する支援策も矢継ぎ早に発表している。
例えば州政府。病気休業がとりやすいように労働基準法を改正し、家賃が払えなくなった人の強制退去は当面停止となった。また通常の保育園は閉鎖されているが、医療従事者などの子どもの保育を無料で提供すると発表した。加えて学校閉鎖が長引く見通しの中(4月末現在、5月末までの休校が決定している)、子ども一人当たり200ドルの支給が決定され、現在はオンラインで教材が提供されている。
そして連邦政府。夫人の感染が分かって以来自身も自主隔離をしていたトルドー首相率いる自由党政権も、様々な緊急支援策を打ち出している。まずコロナ対策の規制により収入の途絶えた人に対して月2000ドルを最長で4か月間支給すると決定し、中小企業に対して家賃などの助成、全雇用者に対しても一定の条件を満たせば労働者の給与を最大75%助成する策などを発表した。
もちろんの影響の大きさを考えると、これらで十分とは言えない。それでも救済策が二転三転している日本と比べると、思い切りのよい政策で、とても迅速に進んでいるというのが私の印象である。オンラインの授業にしても、学校・教師によって違いがあるようだが、5歳の息子のクラスは、休校になって2週間後にはテレビ電話で授業が始まり、それなりに毎日楽しんで学んでいるようだ。200ドルの特別子ども手当にしても、いたって簡単なオンライン手続きで、数日で銀行口座に振り込まれているのには驚いた。

遊具には触らないよう黄色テープが張られている
今回のコロナ大流行のように、世界的に、大多数の人の日常が大きく変えられるような事態は私には初めての経験だ。我が家は、幸い皆健康で、また私自身現在育児休業中のため、現在の自宅待機の日々を平穏に過ごしている。だが、留学生、ワーキングホリデーなどの短期滞在者、非正規滞在の人など、経済的に困窮しているのに支援策からもれてしまう人も多くいる。また、DVやネグレクトなどで、家の中が安全でない人や子どもにとっては、学校や職場といった逃げ場を長い期間失うということは、とても危険なことでもある。もちろん新型コロナの広がりが収まれば、それだけ助かる命も多いわけで、できるだけ早い収束を願わずにはいられない。
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新型コロナウイルスと関連支援策に関する情報は、日々更新されるこちらのサイト(英語)を参照。
https://www.canada.ca/en/public-health/services/diseases/coronavirus-disease-covid-19.html (カナダ連邦政府)
https://www.publichealthontario.ca/en/diseases-and-conditions/infectious-diseases/respiratory-diseases/novel-coronavirus (オンタリオ州政府保健局)
https://www.socialplanningtoronto.org/covid_19_resources (ソーシャル・プラニング・トロントによるコミュニティ向けの情報のまとめ)