東京で?トロント?日本映画祭??

文・斎藤文栄

 先日、「トロント日本映画祭in 日比谷」に行ってきた。

トロントで2012年から毎年開催されている「トロント日本映画祭」が、冠もトロントがついたそのままの形で東京日比谷で開催されているのだ。

上海でもニューヨークでもパリでもなく、なぜトロントの、しかも日本映画祭を東京の日比谷でやる必要があるのか。

どうやら日比谷ではもともと「日比谷シネマフェスティバル」が行われていたが、日本映画を英語字幕付きでも上映したいということで白羽の矢があたったのがトロント日本映画祭だった、ということらしい。

では数ある日本映画祭の中で、なぜトロントだったのか。

きっかけは3年前のトロント国際映画祭(TIFF)に訪れた東京ミッドタウンと三井不動産の社員を、高畠晶さんが案内したことに始まる。彼女は、トロント日本映画祭のエグゼクティブ・プロデューサーとして立ち上げから関わっていて、その話をしたところ、ぜひ日比谷でもトロント日本映画祭をやりたいと、後日連絡を受けたという。(ちなみにトロント「国際」映画祭とトロント「日本」映画祭は主催団体も場所も異なるまったく別のイベントである。)

東京ミッドタウン日比谷前の会場

本家本元の「トロント日本映画祭」は、今年はオンラインで開催された。ジオブロックがかかっているのでカナダ国内でしか映画は視聴できないが、カナダにいればトロント以外でも視聴できるということになる。「トロント日本映画祭」がこうしてカナダ全域、そして東京へと広がっているのを見ると、そのうち世界のあちこちで開催されることも夢ではないかもしれない。

さて、先日はちょうど「トロント日本映画祭in 日比谷」のプレミア上映日だった。オープニングを飾ったのは、私世代には懐かしいマジンガーZを題材にした『前田建設ファンタジー営業部』。マジンガーZの地下格納庫を、建設会社が真面目に設計する実話を基にしたコメディ映画は、大画面で見るとバカバカしさと迫力がよく伝わってきて、新型コロナウィルス感染症の影響ですっかり映画館に行かなくなった身にとって、久しぶりに大空間で楽しむのにピッタリだった。

ちなみに映画祭は、日比谷にある東京ミッドタウン日比谷という複合施設の前の広場で行われ(雨天時は館内で開催)、ゆっくりと楽しむためのデッキチェアがソーシャル・ディスタンスを保ちながら置かれているので、観客は安心して楽しむことができるように工夫されている。都会の真ん中で、ゆったりとしばしの優越感を味わうことができるようになっている。

あいにく初日は小雨のため、屋内での上映となった

期間中に上映される11本のうち9本の作品で、監督の舞台挨拶が予定されており、『前田建設ファンタジー営業部』の上映でも英勉(はなぶさ・つとむ)監督のトークを聞くことができた。監督の話す俳優のエピソードや、監督自身がトロントブルージェイズのファンで、次回はぜひトロントで映画を撮りたいと意気込みを語っていたのも好感が持て、映画への期待がにわかに高まった。本作品の英語字幕付きの上映は、この日がワールド・プレミアとのこと。監督の舞台挨拶が付いて、世界で初めて英語字幕付きを、しかも無料で楽しめるという大変満足のいく夜を過ごすことができた。

英監督のトロント日本映画祭向けのご挨拶は下記リンクでも視聴できる。ぜひご覧ください。

日比谷ミッドタウンでトロント日本映画祭が行われるのは、昨年が初めてで今年は2年目。だが今回は感染症の影響で準備時間が短く大変だったと高畠さんは語っていた。彼女は、この日比谷における開催でも映画の選定、監督のブッキング、当日の通訳も含め、ひとり何役もこなしていた。このG8のサイトでも記事を書いてくれていた彼女が活躍する姿を見られたのも嬉しかった。

この映画祭、誰でも気軽に参加できるところがトロントで開催される他の映画祭に似ている気がした。ここ数年、日本に暮らしているせいで行く機会のないTIFFがにわかに懐かしく思える。ちなみにTIFFは今年はオンラインとのハイブリットで行われたようだ。映画祭も新たな環境に対応すべく色々な形態で行われている。今後、どう進化を遂げていくのだろうか。

「トロント日本映画祭」は来年以降も東京で行われる予定とのこと。機会があればぜひ足を運んでみてほしい。

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