春恒例のタックスリターン
文・空野優子
カナダで毎年恒例のタックスリターン(tax return:日本での確定申告にあたる)のシーズンがやってきた。
カナダでは、前年のうちに収入があった人はほぼみな、個々で所得を申告しなくてはいけないまた、無収入だったり生活保護を受けているなど、所得税を納税しなくてもよい場合でも、申告することで様々な税の控除や還付が受けられるので、実際にはカナダに住む大人の大多数が申告をすることになる。ちなみにカナダに住む外国人の収入も当然申告の対象になる。申告は、カナダ政府とオンタリオ州の両方が同時にできる。
申告のもととなるT4とよばれる源泉徴収票は、雇用者より2月の末までに発行されることになっているので、申告期限の4月末までの2か月間がこちらのタックスシーズンのピークである。この季節にはタックスリターンを代理で行う業者の看板が街中のあちらこちらでみられる。
申告にはいくつかの方法がある。業者に代理申告を頼むほかに、政府公認のソフトウェアを使い、オンラインで申告することもできる。コミュニティセンターなどでは新移民向けの無料の申告補助サービスもあるし、私は学生としてカナダに来た当初は大学の留学生課でボランティアに手伝ってもらった。
このタックスリターンの作業、面倒くさいといえばその通りなのだが、申告をすることで、税の控除・還付が認められ、多くの場合、既に支払った税と必要納税額との差額が返ってくるので、楽しみな面もある。また数年前からは税の還付が自動振り込みになり、申告から2週間ほどで還付を受け取ることができるようになった。もちろん、申告をした後にさらにまだ納めなければいけないことが判明、ということもなくはないが。。。
例えばオンタリオ州在住者で控除・還付の対象となるのはこんなものがある。
- 学費:例えば2年間留学生として学費を3万ドル(日本円で約250万円)支払ったとすると、卒業して収入を得るようになったときに、その分を申告所得から差し引くことができる。学費は親ではなく学生本人が支払うのが普通のカナダでは、働き始めた最初の数年間、この控除はありがたい。同様に学費ローン返済にかかる利子も控除の対象になる。
- 家賃、固定資産税(所得制限あり)
- 消費税(所得制限あり):消費税が13%のオンタリオでは、低所得者には支払った消費税の一部が還付される。私も学生時代、タックスリターンをすることで3か月ごとに確か一万円弱くらいだったか小切手が送られてきた。
- 特定の個人積み立て年金(RRSP):政府推奨の年金積立を銀行で行うことで、積み立てた額を制限内で申告所得から差し引くことができる。カナダにも国民年金にあたるCPP(Canada Pension Plan)があるが、受給額が少なく、将来のための預金を奨励するための政府の施策だとか。これはカナダ市民か永住者のみ利用できる。
- 保育料:月額1800ドル(15万円)にも上る小さな子どもの保育料だけでなく、小学生のアフタースクールの費用も対象となる。(12歳未満の子どもには大人の監督が必要なカナダでは、放課後自宅で留守番をさせることはできないので、働く親にとってはアフタースクールは必須なのだが、この費用がまた高い。)
- 非営利組織への寄付:この控除のせいなのか、私の印象ではカナダ人はよく寄付をする。
他にも医療費や公共交通機関の定期代、子どものスポーツ参加費用など、対象は多岐にわたるので、知っておくと便利である。ちなみにオンライン申請が可能になった今は申告時にレシートを郵送する必要はないが、あとから税務署から提出を求められることもあるので要注意。
ついついあと伸ばしになってしまう毎年恒例のタックスリターン、今年こそは早めに済ましてしまいたい。