最低賃金15ドルは実現するのか?

文・空野優子

オンタリオ州議会が夏休みに入る直前の5月30日、キャサリン・ウィン・オンタリオ州首相は、州の最低賃金を大幅に引き上げ、またその他の労働基準を改定する新法案を政府として提出すると発表した。

新法案は、現在時給11・4ドル(日本円で約990円)の一般最低賃金を、2019年1月までに15ドル(約1300円)とすることを提案している。この時給15ドルというのは週40時間働けば貧困ラインより少し上の所得水準が得られるレベルということで、労働者団体や組合が長らく求めてきた額である。ちなみにオンタリオ州に先立って、アルバータ州でも2018年10月より一般最低賃金が15ドルに引き上げられる予定である。

労働基準法改正を取り上げる記事

政府の発表以来このトピックは、メディアで連日とりあげられている。最低賃金を上げることにどんな効果があるのか様々な意見があるが、一般的な反対理由として主なものは、1)急な賃金増は企業に痛手が大きく経済全体には悪影響、2) 賃金上昇分のコストは価格に転嫁されるので、物価が上がる(特にレストランなどの低賃金の職種の多いサービス業で値段が上がる)、3) あるいは雇用側はコストを抑えるために人の数を減らすか、労働時間を減らすことになるので最低賃金で働いている人にとって結局プラスとはならない、などが挙げられる。

一方、賛成の側からすると、一番の問題は、現在の最低賃金ではフルタイムで働いても必要最低限の所得が得られないことにある。また雇用全体に占める最低賃金の仕事の割合はは増加しているため、昔のようにアルバイトの学生や若者だけでなく、最低賃金で家族を養う状況にある人も多い。そのため、底上げは貧困対策として欠かせない。また、低所得者層で増えた収入はそのまま消費され、地元に還元されるので、経済的にも社会的にもプラスである、との意見もある。

また、一般に雇用者側はこの法案に強く反対しているが、必ずしも一枚岩というわけではない。例えば、Better Way Alliance(http://betterwayalliance.ca/)という中小企業を軸にするグループなどは、働く人に一定の生活を保障できる賃金を払うことは、安全・生産性の面からも長期的にビジネスにとってもプラスだとして、賃金の引き上げを評価している。

最低時給15ドルを求めるキャンペーンのロゴ

ちなみに今回の改正案では、最低賃金の他にも低所得、不安定な就業状態にいる人にとってプラスとなる点がいくつもある。働く人すべてに年10日までの病休を保障すること(現在のオンタリオ州の法律では、労働者が50人未満の職場では休業保障が必須でないので、たとえば病気になった時に休みを取る権利がない)や、正規・臨時・フルタイム・パートなどの雇用形態に関わらず同等の仕事には同等賃金の義務付けなど、これまたグラスルーツの労働運動が長年求めてきた規定が含まれている。

まだ改正案は議会に出されたばかりで、どうなるかはわからない。ただ、オンタリオ州民の7割が最低15ドルへの賃上げに賛成、といデータもあり(注一)、早ければればこの秋の州議会で法案が通り、近い将来オンタリオで最低賃金15ドルが現実となるかもしれない。

注一) http://toronto.ctvnews.ca/poll-majority-of-torontonians-support-15-minimum-wage-1.3365263

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