これから大きく変わる(かもしれない)オンタリオ州での子育て
文・空野優子
オンタリオ州では今年6月7日に州議会選挙が行われる。連邦制をとっているカナダでは、教育、医療、労働など、生活に身近な分野は州政府の管轄となっており、選挙でどの政党が政権をとるのか、関心が高い。今回は選挙戦のニュースの中でも、子育て支援に関する政策をみていきたい。
こちらで子育ての経験がある人にはよく知られたことだが、オンタリオ州、特にトロントでは保育料がとても高い。日本の友人が、認可外の保育園に子どもを預けて、保育料が月8万円!と嘆いていたが、トロントでは乳児の場合、認可保育所の月の保育料は平均15万円以上になる。市の補助金制度もあるが、枠が限られており、そもそも共働きの世帯の場合、補助金支給の基準を満たさないことが多い。年々上がる保育料と待機児童の増加、それに補助金の制限と、子育てをめぐる環境が厳しくなる中で、政策の充実が求められてきた。現在2歳と4歳になる子どものいる我が家にとっても、当然他人事ではない。

保育政策について話すウィンオンタリオ州首相
現在の政権与党である自由党は今年3月、今回の選挙で政権を維持できれば、2020年より2歳半以上の子どもの保育料を無料とする公約を打ち出した。また、このために、今後5年間で保育所の数を段階的に増やしていくこと、給与を含め保育士の待遇を改善していくことを約束している。3歳児でも保育料は現在月1000ドル(8万5千円)ほどになるので、この負担がなくなるのは小さな子どものいる家庭にとっては大きい。
この自由党に続いて、現在第三党である新民主党はさらに大胆な子育て支援策を発表した。収入に応じて保育料が決まる制度を導入し、平均的な収入の家庭で、0歳児から就学までの保育料を一日12ドル(1000円程度)とすることを公約に掲げた。これはケベック州の充実した子育て制度をモデルにしたもので、多くの家庭にとって自由党の案よりもさらに負担軽減となるが、この改革によって増える需要により待機児童が大幅に増加することになるとの指摘もある。
一方、進歩保守党は先日、タックスリベートを基にした支援策を打ち出した。タックスリベートとはタックス・リターン(確定申告にあたる)の時に、前年にかかった保育料などの子育て費用の一部を還元するシステムで、所得に応じて最大で年間6750ドル(56万円ほど)のリベートを受けることができるとのこと。
ただ、これはあくまでも払った後の年度末の還元措置であり、もともと保育料を払える世帯が対象である。今の高い保育料に基づいた制度と、そのために、多くの親(特に母親)が子どもが小さい間は働くことをあきらめているという現状は大して変わらないかもしれない。
投票日まで一ヶ月余り、世論調査では進歩保守党のリードが伝えられ、政権交代の可能性が高まっている。最近の子育て支援の公約発表が、この先の選挙戦にどう影響するのか気になるところだ。
参考:各政党の子育て政策を伝える記事