青少年野球事情~日本とカナダの違い:高校野球の投球数(その2):Baseball Mom 繁盛記(6)

文・鈴木典子

2019年1月25日、日本のプロ野球横浜DeNAベイスターズの筒香選手が日本外国特派員協会で記者会見を開いた。その内容は子供の野球環境への提言だった。(注1)提言の骨子は、トーナメントからリーグ戦への転換と、球数制限の導入だ。日本の子供たちを守るために投球制限が重要だと気付いたのは、2017年に参加したWBC(World Baseball Classic)で大人のプロ選手にさえ投球制限が適用されるのを経験した時だという。

2014年9月19日付の私の記事でも投球制限の話を書いた。2013年春の甲子園(選抜高校野球大会)で済美高校の安楽投手が9日間5試合で772球を投げたことが発端だ。その後、青少年の体を守るため、日本でも対策が立てられ、2018年の夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)では初めて「タイブレーク」制度が採用された。(延長13回以降は、ノーアウトで選手が1・2塁にいる状態から試合を始め、得点しやすくすることで延長戦が延々と続くことを防ぐ方策だ。)しかし、依然として「負けたら終わり」のトーナメント制中心の日本高校野球の世界では、エース投手の連投が当たり前で、同じ大会で準優勝した秋田県金足農業の吉田投手も6試合で878球投げている。その後の12月に、新潟県高校野球連盟が、全国で初めて県大会で投手の投球数を1試合につき1人100球に制限することを発表した。一つの県の動きでしかないが、正式な野球連盟がルールを作ったということは、大きな一歩であると言える。

一方、2019年1月、Baseball Ontario(オンタリオ野球連盟)は、Arm Care Rule 2020を発表し、2008年から導入している投球制限に、1試合の投球数に応じて休養日を設ける制度を細かく規定した(注2)。例えば高校生レベルであれば、一日の投球数は最高105球だが、それ以下であっても86球以上投げたら4日、70球以上なら3日は投球できない、などという制度である。毎日のように試合のあるプロ野球では少なくとも先発投手の登板は「中3日(なかみっか。登板したら次に登板するまで3日の休養日)」とか「中4日(同じく4日休養)」といって連投はないのと同じだ。整形外科医の意見でも、一定数以上全力で投げたら、半日とかではなく数日の単位で肩を休ませることが非常に重要だとされている。カナダでも市や県、州レベルの大会やトーナメントになると、週末3日間でダブルヘッダーを含む5~6試合が行われることが多いため、設けられた規定だと思われる。

カナダで野球をやった我が家の息子たちでさえ、いざ試合になるとやはり勝ちたい、投げぬきたいと無理をして、肘や肩を壊している。大きく一歩前進した県がある日本の青少年野球ではあるが、カナダや米国と比べるとまだまだ子供の体を守るための体制も気持ちも整っていない。最初に引用した筒香選手が会見で言ったように、勝利至上主義ではなく子供の将来を考え、日本の子供たちが長く楽しく野球を続けられるようになってほしいと、心から願う。

 

注1:1月25日付ジャパンタイムズ:

https://www.japantimes.co.jp/sports/2019/01/25/baseball/japanese-baseball/baystars-slugger-yoshitomo-tsutsugo-becomes-advocate-pitch-count-limits-youth/#.XFGyqS1CfIU

注2:

https://www.baseballontario.com/filestore/htmleditattachedfiles/approved_arm_care_rule_changes2018-12-19t10-49-56v001_by_292.pdf

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