運動会に期待するもの:日加の小学校の違いについて

文・鈴木典子

私が子供のころは、運動会というのは秋の風物詩で、10月10日の体育の日(それこそ東京オリンピックの開会式が行われた日だ)前後に行われるのが普通だった。

今は多くの学校が春の5月に行うようになっている。秋には合唱コンクールや文化祭などほかの行事もあり、中学生では受験の時期が近いことなどが、その理由のようだ。時期はともかく、運動会のある日曜日には、おじいちゃん、おばあちゃんから近所の人までが学校に行き、子供たちの活躍を応援し、校庭でお弁当を一緒に食べるのが楽しみだったのを覚えている。

今年の5月は異常に気温の高い日曜日があり、熱中症なども懸念されて、プログラムの変更、時間の短縮、午後のプログラムを翌日の平日に延期などの対応をした学校も多かったようだ。休みが取れずに子供の雄姿を見られず残念だった保護者もいることだろう。

考えてみると、日本の運動会は、どちらかというと発表会のような性格だと思う。学年全体で各学年数種目をするので、プログラムの上で学年は入り混じるし、丸一日かけて全学年の種目を「発表」するので、ぶっつけ本番というわけには行かないだろう。子供たちは出場する種目や入場行進を繰り返し練習している。

わが子の出番だけ見たくても、一日の間に出番が散らばっているので、見る方もやる方も一日仕事だ。家族にとってもお祭りのような一日だったと思う。運動会を休日にするので、月曜日は学校が代休だったので、「授業」扱いではあるのだが。

トロントの小学校にも運動会がある。我が家の子供たちが通った学校では、平日の授業中に行われ、ダンスなどは無く、走ったり投げたり跳んだりの「記録会」だった。当然入場行進などは無い。学校の代表選手になって、トロント市からオンタリオ州の陸上競技大会へと進む子供の選抜の場でもあった。練習を重ねて成果を出すというより、どの種目に出るかの適性を見たり、やり方を知るための練習程度だったようだ。

ちなみに、発表会という意味では体育のプログラムの中にダンスがあり、地元のホールを借りて発表会をしたり、音楽の授業で合唱や合奏の発表会も良く行われていたが、いずれもほとんどが平日の日中。トロントでは保護者が子供の行事や先生との面談で仕事を休むことは普通に行われていたので、共働きが多いにも関わらず、子供の発表の時だけ仕事を抜け出して応援、鑑賞に来る保護者は多かった。

校庭で行う「記録会」も大学のスタジアムなどを使った「体育大会」も、大体が一つの学年の種目はまとめて行うので、わが子の出番だけ見に来ることが容易だし、選手自身も出番だけ行けば良い。さっぱりしたものだが、学校代表の選手が勝ち進んで州大会に出るとなったら、クラス全員が校長や担任に引率されて応援に行くのもまたよくあることだった。

公立で学校と家と職場が近いので、頻繁に子供の様子を見に行けるトロントと、運動会でもないと子供の様子を見ることができず、平日職場から学校に見に行くことも不可能な日本(東京)。授業のある時間帯に大会や発表があって、学校代表として出場する場合は欠席扱いにならないトロントと、大会は週末にあり平日の放課後に練習をする日本。学校におけるスポーツや音楽の位置づけの違いが表れているように思う。

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