世界から注目の国際会議がバンクーバーで開催!

文・斎藤文栄

Women Deliverという国際会議をご存知だろうか。3年に一度開かれている世界最大級のジェンダー平等や女性の権利や健康に関する会議である。

近年は、2013年にマレーシアのクアラルンプール、2016年にはコペンハーゲン、そして今年(2019年)はカナダ政府の全面的な支援を受け、6月3日から6日までバンクーバーで開かれた。回を追うごとに力をつけ大きくなっている国際会議で、開催するごとに参加人数が増えている。1ヶ月前には既にキャンセル待ちの状態で、世界各国165 カ国から8,000人もの参加者が集まったとのこと。実際に参加した友人は、すごく盛り上がって興奮したわ!と弾む声で語っていた。

Women Deliverとは、直訳すると「女性が出産する」という意味になる。その名の通り、もともとは世界の妊産婦死亡率の高さを何とかしようと始まった会議だが、今ではジェンダー平等から、健康、栄養など、様々なトピックが議論されるようになってきた。その意味では、単に出産に関わることだけではなく、Women Deliver Messagesと女性はメッセージを発信するという主体であるという意味合いも兼ねているように思える。あるいはWomen Deliver Promises女性は約束を守るという意味にもとれる。

さて、この会議では様々なメッセージが発信されたが、カナダのトルドー首相のメッセージも本当に力強いものだった。開会式に参加したトルドー首相は、「ジェンダー平等は攻撃にさらされている」(Gender Equality is under attack)と発言。女性に対する脅威、特に昨今の女性の権利に批判的な政治家らに言及し、これらに対し共に闘おうと呼びかけた。

トルドー首相の発言は、当会議の直前にオタワで行われたマイク・ペンス米国副大統領との会談を意識したものだとも言える。この会談でトルドー首相は米国の州レベルで次々と成立している人口中絶禁止法への懸念を表明した。Women Deliverの発言も、米国の姿勢を暗に批判したとも受け止められる。トランプ政権になってから、米国は中絶を提供するいかなる機関や団体への資金拠出を止めているが、カナダは当時、政権与党は保守党だったにも関わらず、逆に途上国の女性の健康に対する支援を増額している。Women Deliverで、トルドー首相はさらなる支援を発表した。

心配なのは、秋に控えた総選挙だ。大手建設会社SNSラバランの贈賄事件に関する閣僚の辞任やパイプラインを含めた環境問題への対応の不信感により、カナダ国内のトルドー首相の支持率は、今や米国内におけるトランプ大統領の支持率よりも低い。3人に2人は不支持を表明しており、このままいくと今年10月に控えている総選挙では、保守党が政権にまた返り咲くのではないかという見方が強くなっている。しかし、選挙結果がどうなろうとも、カナダの途上国の女性への支援は続いてほしいと願っている。

ところで、Women Deliverには日本からは今までも母子保健関係者などが参加していたが、今年は若い女性の活動家が参加し、東京で報告会をやるらしい。これを機にぜひ日本のメディアにもこうした国際会議に着目してもらいたいと願っている。私は何人かの日本政府のジェンダー平等を担当する部署の人たちにWomen Deliverへの参加予定があるか聞いてみたのだが、(予め想像していた通り)皆、会議の存在すら知らなかった。3年後の次回の会議には、ぜひ多くの日本人が参加してほしい。

Women Deliver 2019年バンクーバー会議: https://wd2019.org

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