カナダ最西端、太平洋に面したBC州バンクーバー島より − COVID19現状報告

文・サンダース宮松敬子

 カナダが諸外国に遅れまじとCOVID19について国を挙げて真剣に取り組み始めたのは、首相の妻Sophie Gregoire Trudeau夫人が英国に招かれての講演旅行から戻り、陽性反応が出た3月13日以後のことである。その時の感染者は全国で152人、死者はたった一人であった。

 何しろ各州の権限が強いお国柄のため、それ迄は国全体の足並みを揃えるのは並大抵ではなく、それが足かせになっていたと聞く。日本のように首相が一言「学校閉鎖!」といえば、全国津々浦々まで同じ行動を取るのとはわけが違うのだ。

 首都オタワから一番遠い、しかも聳え立つロッキー山脈を越え、更にジョージア海峡をまたいでいるビクトリア市では、当時「ここは大丈夫よ」なんて楽観論さえも出ていたものだ。

 しかしそんな甘っちょろい事を言ってはいられなくなったほぼ一ヶ月前からは、誰でもが真剣にこの問題に取り組むようになって行った。この原稿を書いている4月15日現在、感染者は27,035人死者は900人に上っている。

 まるで電光石火の如く日々事態が変わるに従って、今は連邦、州、市町村を挙げて厳しい取り決めが日々発表されている。

 さてそんな中、BC州の州都ビクトリア市の現況を写真でお伝えしようと思う。

 人が集まるすべての行事は一切禁止されているため、12日はキリスト教の復活祭の日曜日であったがどの教会も立ち入り禁止で、レストランやコーヒーショップは見事なほど全部閉まっており、客は中で飲食は出来ない。

 とは言え、電話やオンラインでオーダーすれば、後ほど自分で取りに行ったり、配達して貰うことも可能である。

ドアの入り口のテイクアウトのサイン

しかしこの支払の際に現金はご法度で、クレジットカードしか受け付けないという店もある。聞くところによると、今の時期ピッツアの需要が一番高いとか。

Order onlineのサイン

 街中のスーパーマーケットでも異常なほどにセールの札が付いているのが、味の違う各種のピッツアである。

お店冷凍のピッツア

だが残念ながら冷凍ピッツアは冷凍ピッツア。空腹を満たしてはくれても満足度は焼き立てをレストランで食べるのとは違う。だがこの時期にそんな文句は言えないのが現状だ。

 しかしこれを買うためのスーパーでの買い物がそれは大変に面倒で、入り口は同間隔のテープが張られており、入場を一定の人数内に制限している。

床のサイン

どんな買い物をする時も、隣の人との距離を置くようにと至る所にサインが掲げられている。

冷凍Eggo
冷凍アイスクリーム

当然ながら測り売りの食料品は全てビニールの囲いが施されており、手を触れることは出来ない。

ビニールで囲われた測り売り

 もちろん街中は世界中の大都会と同じで、それはそれは静まり返っている。

閑散とした街中

 ビクトリア市は夏が近づくと、Garden Cityの愛称に恥じないように街中が花で飾られ美しく変身する。通年は3月末頃から観光シーズンが始まるのだが、今年は様相が一変。街中で一番高級なEmpress Hotelの前にも観光バスは一台もない。

EmpressHotelの前

 そのホテルの前には、1778年3月にこの島に初めて足を踏み入れたアダム・クック船長(1728-1779)の像が立っているが、彼にもマスクが掛けられておりちょっと笑いを誘う。

クック船長のマスク

 もちろん普通の図書館は閉鎖されており、加えて町中に設置されているミニ図書館もテープが掛けられている。

ミニ図書館

 多くの人が自宅で仕事しているのだが、途中息抜きに公園に出かけても、こんなサインが至る所に見られる。

公園内のサイン

 そのため道路でさえ人とすれ違う時は、お互いに2mの間隔を空けるためサッとよけるのが習い性になった。もちろん私が東洋人だから避けるのではない。だがそれに慣れるまでは、BC州が第二次世界大戦勃発直後に日系人を根こそぎ強制収容所に送った時は、多分こんな風に避けられて人種差別を受けたのだろうと、何やら当時の世相を彷彿とさせられた。

 でもその日系人が戦前ビクトリア市に寄贈した幾本もの桜の苗木に源を発した桜並木が、今年も美しく咲き乱れている。

桜並木

 だが何と言っても一番大変な毎日を送っているのは、感染者を相手に最前線で働く医療関係の人々であるのはビクトリアでも同じだ。そんな人々に感謝の気持ちを届けようと市民は人目の付く場所にサインを書いたり、また毎日欠かさず夕方7時になると、市内各地で音楽を奏で感謝の意を表している。

バグパイプの演奏
チョークで書かれたサイン

 いつ収束するか今のところまだ見通せないが、町中に急速に増えたホームレスのテントが、今や海岸にまでも広がっている。

ホームレスのテント
海岸に住むホームレス

彼らの間でのクラスター感染が今後の大きな問題になることは火を見るより明らかだ。

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