海に生きる女性たち

文・斎藤文栄 

現在滞在している西アフリカのコートジボワールで、女性たちが日本の支援で研修を受けた「魚のすり身プロジェクト」のワークショップに参加する機会があった。

このワークショップはNPO海のくに・日本が主催したもので、コートジボワールで、販売に適さない魚を活用し、すり身を使った加工品を売ることで女性の収入を創出する活動を行なっている。以前、モロッコで行ったワークショップにコートジボワールの人が参加したのが縁で始まったという、海を超え、国をまたいだ壮大なプロジェクトである。

日本で魚のすり身というと、かまぼことかイワシのつみれ汁とかそんなおかずを想像するが、すり身弁当としてコロッケやハンバーグなどが出てきたのには驚いた。コロッケはカニクリームコロッケのような味わいで、ハンバーグは、コロッケよりも少し魚の匂いが強いが、健康的なハンバーグとしてなかなかに美味しく味わった。そういえば、小さい頃はすり鉢でよくゴマを擦るお手伝いをさせられたな、と懐かしい気持ちになったが、コートジボワールでも、すり鉢に似たタリエ(写真右下)という調理器具を使っているようだ。

写真提供:NPO海のくに・日本

すり身研修生である女性たちは、圧倒的に貧しい生活環境の下で教育機会も少なく、保健衛生や栄養についての知識も十分でない。文字が読めない女性たちも多く識字率は約2割程度だそうだ。参加した女性たちは、みな明るく元気で、お揃いのユニホームを着てすり身弁当を振る舞う様子はまぶしいものがあった。研修生のひとり、ユージェニーさんは、アフリカ女性の暮らしぶりなどを小説に書いていると言っていた。前述したNPOで彼女の小説を翻訳する企画があるそうなので、彼女の小説が日本語で読めるようになる日を楽しみにしている。

* * *

ところで、日本の第一次産業、農林漁業の中で、就業者に占める女性の割合が一番低いのが漁業である(農業39.3%、林業14.3%、漁業11.4%、男女共同参画白書令和4年版)。漁業といっても、海上・陸上で漁業に携わる人の数であり、海女をのぞき、海に出るのは男性というイメージがある。男性は海に出て、女性は陸上で準備や選別、加工業などに取り組む・・・という、まるで桃太郎に出てくる、おじいさんは山で芝刈り、おばあさんは川で洗濯というような、ステレオタイプなイメージを抱きがちだが、その認識も変わりつつあるようだ。

水産振興ウェブ版626号(2020年12月)には、「漁村女性のこれまで、そしてこれから—全国漁協女性部連絡協議会60周年を記念して—」と題したレポートが掲載されているが、こちらをみると、女性が多く関わっている陸上作業のほか、夫婦で海上作業に出る夫婦操業のケースや水産物を利用した起業のケースなど、様々な関わり方を取り上げている。海に出る、収入を得ることが一家における自分の位置付けを明確にし、自信に繋がることもあるようだ。

カナダのニューファランド・ラブラドール(NL)州といえば、カナダの東に位置し、大西洋に面している、自然豊かなところである。映画「シッピング・ニュース」や9・11の際に臨時着陸した人たちと地元民の交流を描いたブロードウェイ・ミュージカル「Come From Away」の舞台でもある。もちろん漁業も盛んで、ズワイガニやシシャモ、えびなどが日本に輸出されている。

そのNL州に、女性のみで海に出て漁業を行なっているGirls Who Fish (GWF)というプログラムがあり、女性や少女が海上漁業に出るためのスキルを学んでいる。そのプログラムが、いま日本でも紹介され、静岡で「漁する女子ジャパン」という名前で展開されているとのことだ。ただ、海上に出る女性や少女を増やすのではなく、女性が主に関わっている陸上作業の価値を見直すことで、ジェンダーや地域の活性化につなげることを目的としている点にも注目したい。(*)

カナダや日本で様々な形で漁業に関わる女性が多くなっていることを考えるに、コートジボワールでも、今はすり身を作っている女性たちが、将来は自分で海に繰り出したり、起業したりする日が来るかもしれない。私はワークショップで会った女性たちの顔を思い出しつつ、そんな将来を想像して楽しんでいる。

(*参考)

How an all-female fishing program in Newfoundland and Labrador inspired women in Japan The Globe and Mail
Published September 18, 2022

海洋学部の李准教授がコーディネーターを務める「漁する女子ジャパン」プログラムが開催されました 東海大学2022.08.26 

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。