出生国以外に住むという選択

文・サンダース宮松敬子  

カナダの新移民政策

 カナダは去る11月1日に今後の移民政策の概要を発表した。まず受け入れ人数を見ると、‘23年に46万5000人、’24年に48万5000人、‘25年は50万人の予定で、これは’コロナ禍だった‘21年(40万5000人)比から見ると23%も増加することになる。

 自由党のトルドー政権は、今までも積極的に他国からの移民を受け入れているが、これは国の経済成長を支えるのに欠かす事のできない重要な政策と位置付けているためである。先進国の特徴としてカナダも出生率は1.49(‘22年予測)と低く、また近年は技術者の退職増もあり、それを補うための方策なのだ。

 現在カナダは、労働力の増加分の殆ど100%を移民が補っているといわれるが、特にSTEM(Science科学、Technology技術、Engineering工学、Math数学)の分野での受け入れに重点を置いている。加えて農業地帯や地方の小さな治自体などにも移住者を分散し、地域の活性化を図る計画である。

 この指揮を執る自由党のトルドー首相は「移民は企業が必要とする労働力を穴埋めし、経済の成長に不可欠な存在だ」とツイッターでも発信している。

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 当然ながらそうした技術者を受け入れた後には、その家族も出来るだけ速やかに後追い出来るようにすることや、新移民たちに対する公用語(英語/仏語)の教育にも予算を組むことを約束している。

 この上昇率で行くと、‘36年には人口に占める移民の割合は30%になると予測され、まさに世界に冠たる移民大国カナダの名に恥じないものである。国が成長していく上で、自国民の出生率では補えない人口不足を、しっかりと移民に頼るための方策を念頭に置いている国の姿勢が伺える。

 だがこれだけ多くの移民が移住して来ることで、従来の欧州系カナダ人との間にアメリカのような大きな軋轢が生じない事を願っている。

 世界的なニュースにはならないものの、カナダでも白人至上主義者たちの有色人種に対する嫌がらせは決して珍しいことではない。特にコロナ最盛期には、残念ながら中国人を筆頭にアジア人へのヘイトクライムが各地で勃発した。

日本の現状

 ひるがえって「少子高齢化」の問題が、もう長いこと議論されている日本政府の対応はと見ると、G7の国々の中では「難民、移民政策」が著しく遅れていることをよく耳にする。

 2020年3月に発表された論文「移民政策なき外国人労働者政策を擁護する知識人たち」(http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/31041/shakaikg0120200010.pdf)を見ると、「近年外国人労働者の日本での就労は驚くほど増えているにもかかわらず、日本政府は、一 連の施策は『外国人材の受け入れ』であって、『移民政策ではない』という言明を執拗に繰り返 してきた。

 そして現在行われている受け入れ拡大は、労働力不足を補う『外国人』」の受け入れに過ぎ ないのであって、日本に定住することを想定した『移民』としての受け入れではない」と書かれている。

 つまり日本には確固とした移民政策と言ったものが存在しないのである。

 だが、国立社会保障・人口問題研究所の是川夕国際関係部長は「労働を目的とした受け入れをみると、例えば高度人材では欧米諸国を超えている。年間受け入れ数では、絶対数で独仏を抜き、人口比で米国を上回っている。十分に移民受け入れ国となっていると言ってもいい」と某インタビューに答えている。

 また移民政策などが専門の鈴木江理子国士館大教授は、日本にはすでに多くの外国出身者が働いているが、他国と比べ日本の特徴はどんなものかの質問に「日本ではすでに、多くの外国人が様々な分野で働き、生活しているにもかかわらず、その現実が見えていない、あるいは関心を持たない人が多いことだと思う」と発言する。

 一方難民問題は、‘21年度の統計によると日本の難民認定申請者は2413人であったが、実際に承認されたのは74人で、それは僅か0.3%に過ぎない。

 国際社会の中での日本の立ち位置から見れば、移民/難民問題はこれから更に本腰を入れて、国家レベルで取り組まなければならない必要に迫られる日が必ずや来るであろう。 

移住したい国の人気ランキング

 そんな中、11月30日付けのNewsweek日本語版には、世界の移住したい国人気ランキングの一位はカナダ、二位は日本との記事が掲載されている。

 これは「海外移住」に関連したフレーズと目的地となる国を、世界101カ国の月ごとの検索データを基に分析」したものである。

 結果は、移住したい国として世界で一番検索されたのがカナダで、「安全で失業率が低い、移住時のビザ取得の選択肢が多い、人々がフレンドリーな上、景色が美しい」のが理由という。

 次に続いた国は日本で、「景色の美しさ、治安の良さ、仕事の多さ、生活の質の良さ」であったと言う。

 「人生100年時代」と言われる今、何処を終の棲家かにするかのchoiceが多岐に渡っているのは確かなようだ。

参考資料:

https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/news/2022/11/an-immigration-plan-to-grow-the-economy.html

https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/news/2021/12/canada-welcomes-the-most-immigrants-in-a-single-year-in-its-history.html

https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/news/infographics/immigration-path-stronger-canada.html

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