「Gap Year」 という選択
文・ケートリン・グリフィス
9月から娘が大学生になる。同じ年頃の子どもを持つ知り合いに会うと決まって「(娘・息子さんは)どの大学に決めたの?」といったような質問が飛び交うが、その中で4割ほどの親が「Gap Yearを取る」と答えている。今回の記事ではこのGap Year(ギャップ・イヤー)を紹介したいと思う。
ここでのGap Yearとは高校卒業後に一年間かけて、大学、あるいは進みたい道を選択する猶予期間をもうけること。大学で学びたい分野の選択がはっきりしないまま高額な大学費用を払うことへの疑問や抵抗がGap Yearを選ぶ大きな要因でもある。オンタリオ州では特にここ数年Gap Yearの認知が高まり、自ら進みたい大学や専門学校を検討する時期として活用している学生が増えたそうだ。

親がこのチョイスをすすめているケースも多い。先ほど述べた知り合いの4割の半分ほどが、自分たちがGap Yearを選択するよう娘や息子に強く提案した、と言っている。まだ実家に住めて、背負う責任も少ないうちに興味を持ったものにチャレンジできるチャンスだから、とすすめているようだ。特にコロナの影響で数年間「当たり前」の学生生活がなかったため、猶更「自分探し」ができるGap Yearは大切だと認識している。
ヨーロッパなどでも昔からGap Yearはあり、「自分探しの旅」に出かけるというイメージが強かった。しかし最近では昔のように「旅」に出かけるのではなく、もう一年高校に通って単位を得たり成績を伸ばしたりする学生が増えている。もちろん自分と向き合うための時間でもあるので、学問以外の挑戦や趣味などにものめり込める機会であると認識しているが、大学資金を得るためにバイト稼ぎをしたり、進みたい大学へ行けるための追加勉強などに費やすことがほどんどらしい。

オンタリオ州では日本と違い大学入試がなく、ほぼ成績だけで希望大学への入学の合否が決まる (注)。またオンタリオ州では大学申請プロセスにOUAC (Ontario Universities‘ Application Centerオンタリオ州大学申請センター)というシンプルな総合システムがあり、大学進学を目指す学生はOUAC番号をもらい、入学したい大学と学部などを直接このOUACサイトから一括出願できるようになっている。
高校三年の11月に学生は自分のOUAC番号を受け取れるのだが、その番号は3年間有効である。なので、Gap Yearを1年、もしくは2年間とったとしてもオンタリオ州の大学へ進むための妨げにはならず、同じシステムで同じ要領で希望する大学へ出願できるシステムになっている。Gap Yearが現実的な選択肢として学生とその親の間で広まりつつあるのはこの便利さのお陰もあるのだろう。
Gap Yearという選択に個人の向き不向きがあるのは確かだ。実は私も娘に「Gap Yearのオプションもあるよ」と勧めてみたが、彼女は「自分の性格から、どうしてもダラダラした生活を送ってしまうのが目に見えてるからダメ」との返事が返ってきた。幼稚園の入園式にどうしても教室に入りたがらず大泣きしていたのがついこの間のように感じるが、色々考えて行きたい大学と学部を自分で調べ、そして無事第一志望に合格し9月から大学生活を過ごす彼女が誇らしくもある。ぜひこれからも娘の旅立ちを応援し続けたい。
注)大学側が対象とする成績は高校三年単位の教科のみであるが難関とされる大学では成績プラス課外活動やコンテストの入賞成績などが求められ、学部テストや面接を必要とする所もある。