学生による難民学生のサポート

文・空野優子

カナダには毎年多くの難民がやってくる。特にトロントなどの都市には難民が多く、難民としてやってきて、ビジネス、政治、芸術、その他の分野で活躍している人も少なくない。難民関連の話は、ニュースでも取り上げられることが多いので、こちらでは割と身近なテーマである。私自身は、勤め先の大学で、国外の難民キャンプから若者を受け入れるウスク(WUSC Student Refugee Program)と呼ばれるプログラムのサポートに携わっている。

カナダの難民制度は、カナダに入国してから難民申請する人向けの認定制度の他に、難民キャンプで暮らす人を直接カナダに迎え入れる制度がある。この中にも、カナダ政府の支援でやって来る難民(Government Assisted Refugees)の他に、難民支援に携わる組織や有志のカナダ市民が集まって支援者となるスポンサー制度(Private Sponsorship of Refugees)がある。*1

今回私が関わることになった非営利団体のウスクは、後者のスポンサー制度を通じて、難民キャンプで育った若者をカナダの大学に迎え入れる活動をしている。カナダ国内の100を超える高等教育機関と協定を結び、各地に学生を派遣している。

このプログラムのユニークなところは、受け入れ先の決定や渡航に関するサポートはウスク本部が行うが、難民としてやってきた学生の支援は、受け入れ先の大学とその学生が担う点だ。例えば私の勤めるヨーク大学のグレンドンキャンパスでは、まず、学生によって運営されるウスク支部は公認の学生団体となっていて、在籍する学生は授業料とともに自動的にウスク支援費を徴収される。その額は、フルタイムの学生一人につき年4.5ドル程度(日本円にして500円くらい)だ。この徴収されたお金がウスク支部に支給され、団体の活動費と受け入れる学生の生活費補助として使われる。そして大学側も、学費、寮費の免除と奨学金の支給などの直接支援のほか、私を含めたスタッフの一部もサポート任務に携わっている。

受け入れられる学生は、入国前にカナダ政府により難民認定され、永住者としてカナダに入国するので、国内の学生向けのローンなども受けられる。つまり、このプログラムは、カナダ政府、ウスク本部、受け入れ先の大学と、各大学にある支部を運営する学生ボランティアの協力で成り立っている。

つい最近、カナダの新学期に合わせて学生が一人やって来た。到着直後から、買い物、学生証の発行手続き、受講する授業の選択から、学食でのメニューの説明、どの銀行で口座を開くべきかの情報集めまで、ウスク支部のボランティアの学生たちは協力しあってこまめにサポートしている。やって来た学生は、環境の違いに戸惑いつつも、カナダでの新生活に胸を踊らせているようだ。このまま実りある大学生活を送ってくれることを願う。

このようなプログラムが全国で展開されているのは、カナダ人にとって難民が身近な存在で、難民の受け入れに対しても肯定的な意見が多い社会事情を反映しているのだろう。

このように若いうちから身近に接する機会があるというのは、難民に対する理解を深める上で大切だと思う。日本では難民として認定される人の数自体極端に少ないが、最近入国管理法が改正され、難民申請中の人の強制送還が可能になったという。今よりさらに受け入れを制限する動きはとても残念だ。

*1https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/refugees/help-outside-canada/private-sponsorship-program.html