生徒の自主性を重んじた指導とは

文・鈴木典子 

自主性を重んじる、という表現は日本カナダを問わず、色々な場面で見られると思うが、特に子供や若者の指導の際に使われることが多いのではないだろうか。では一体「自主性」とは何なのかというと、似たような言葉も多く、うまく説明できないので調べてみた。

まずは広くネット検索すると、「「自発性」「自主性」「主体性」「自律性」「自立性」「積極性」の違い」というサイトがあった(注1)。ウェブ辞典Weblio 英和辞典・和英辞典 – Weblio辞書で調べた英語表現も併せて紹介する。

これによると、「自主性」は「人に言われる前に他人の指導や指示によらず自分の判断と力でやるべきことをやることができる」力。英語では:autonomy、independence (of mind)

「自発性」のポイントは「他からの働きかけを必要とせず自ら進んで行う」意志の強さで、対になりそうなのは「強制的」。英語では:spontaneity、initiative、self-motivation

「主体性」とは、「やるべきことが決まっていないときでも、自分で目標や目的を設定し、自分の意思や判断で行動しようとする態度、性質」で、自主性とはやるべきことの有無の点が大きく異なる。英語では:autonomy、agency、independence、identity

Weblioには「主体性」という概念についての説明があった。「「主体性」という概念は英語で「autonomy」と「agency」という二つの単語で表現されることが多い。これらの単語は似た意味合いを持ちつつも、使用される文脈によって微妙なニュアンスの違いがある。」「「autonomy」は個人や集団が自己決定の自由を持ち、外部の支配や影響から独立している状態を指す。しばしば個人の自律性や自己管理能力を示す場合に用いられる。」「「agency」は個人が自らの行動をコントロールし、意志に基づいて行動する能力を指す。しばしば自己決定や自己実現の文脈で使用される。」

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「自律性」とは「他からの支配や強制、助力を受けることなく、自分の立てた規範によって自分に関する行動を決められる性質」で、「自立性」とは「他人の助力や支配などによらず、自分の能力や判断でものごとを行える性質」。「自律」と「自立」との違いは、「規範意識」の有無のようです。英語では「自立」は最初に出てくる単語はautonomyだが、個人的にはself-standing、independentの方がしっくりくる。「自律」はautonomy一択で、科学用語・経済用語に頻出(自律神経、自立移動体(ロボットについて)、financial autonomy(財政上の自律性)など)。

「自」からは離れるが似た概念の「積極性」は「ものごとに対し自分から進んで関与したり、ある程度以上の意欲や関心を持って取り組める性質」で、今までの「自○性」達との相違は「行動のきっかけが自分か他人かを問わないという点」にあると分析されていた。

いや、なかなか面白い。簡単に「子供の自主性を育む教育」とか「選手の主体性を重んじる指導」とか言っているが、教育も指導も、技術や知識の優れた人がより劣った人や無い人に技術や知識を教え体得させることなので、自然にトップダウンになるし、教えたことがまずできるようになることを求めがちだ。もともと「学ぶ」という言葉が「まねぶ」からきているので、与えられたお手本通りにできることが求められている。英語のCoachも四輪馬車(Coach)で連れて行く、家庭教師の下に行くことからきているらしい。いずれも「導かれる」立場なので、自ら何かをするということは難しい状況が基であると思う。特に軍隊の教練の流れをくむ日本のスポーツの世界においては、善悪・要否の判断をせずに上官の指示を完ぺきにこなすことが最良とされて長い。教育、スポーツの分野では主体性も自主性も、意識しなければ尊重も発揮も難しい性質なのだ。

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そんな中で、ボトムアップ理論に基づくサッカー指導(注2)は数年前から他の種目にも広がり、昨年の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)で優勝した東京の慶応高校の選手主体の活動など、選手の主体性・自主性を重んじる指導が現在の新しい指導方法の大きな柱になってきている。この方向性は、自己決定理論に基づく人間が持つ3つの心理的欲求「有能感=自分の力が発揮できている感覚」「自律感=自己決定出来ている感覚」「関係性=関係するメンバーとの親密さ」を満たすという意味でも有効なのだそうだ(注3)。

私はカナダの教育、スポーツ指導の場では「自主性」「主体性」は日本よりも尊重されているように感じているが、日本の今後の状況をしっかり見ておこうと思う。

注1:「自発性」「自主性」「主体性」「自律性」「自立性」「積極性」の違い – 社会人の教科書 (business-textbooks.com)

注2:【公式】畑喜美夫 公式サイト|進化するボトムアップ理論 (hata-kimio.net)

注3:自己決定理論とは?重要な3欲求や内発的動機づけまでの段階を解説 | Musubuライブラリ