カナダ国政選挙

文・空野優子

2025年4月28日にカナダ連邦政府の国政選挙が行われた。結果はマーク・カーニー首相率いる自由党が議席を伸ばし、過半数にあと一歩及ばないものの、4度連続の自由党の勝利に終わった。

カナダは2015年にトルドー前首相率いる自由党が政権をとって以来、自由党政権が年間続いていた。だが数年前から自由党の支持率は下がり、ほんの数ヶ月前まで、次の選挙ではボワリエーブ氏率いる保守党が政権を奪取する、というのが大方の予想であった。

(CTV News)

それが一変したのが隣国アメリカでのトランプ大統領の登場である。トランプ政権は、自動車、エネルギー、その他アメリカへの輸出品へ大幅な関税を課す、という今までの貿易体制を大転換する関税政策を打ち出した。三船純子氏の記事にもある通り、アメリカへの輸出に頼るカナダ経済にとっては大打撃で、場合によってはオンタリオ州だけで6万8000もの雇用が失われるとも予想されている(注)。

貿易政策にとどまらず、トランプ大統領からは、カナダをアメリカに統合し51番目の州とする、という突拍子もない発言も飛び出し、経済へのダメージだけでなく、カナダ存続の危機とも言える状況が出現した。(カナダ併合の真意については、具体的な計画があるかはともかく、トランプ本人は本気だという説明を繰り返している)。

そんな中で年初めに退陣に追い込まれたトルドー前首相に変わって、この危機を乗り越える後継者として名乗り出たのが、マーク・カーニー氏である。

マーク・カーニー氏はカナダとイギリスで国銀の総裁を勤めたエコノミストだ。2008年の世界経済危機の中、カナダの経済を舵取り、さらにイギリスでBrexit (EU脱離)を乗り切った経験を全面に出し、トランプ関税の危機を対応するのにベストな候補として自由党の党首選を勝利し、トルドー辞任後の首相に就任した。

ただこのカーニー氏、政治家としては全くの新人で、党首から首相となった当時は選挙に出たこともなく、議席すらなかったわけで、国政選挙での選挙戦がどのような転換になるかは、未知であった。

結果としては、自由党は第一党の座を維持した。政権奪回を狙っていた保守党は、議席数は延ばしたものの野党の座にとどまることになり、残りの主要政党である新民主党と地域政党ケベック党は大きく議席を減らすことになった。

余談になるが、カナダのような広大な国は地域ごとに政治色が大きく異なる。連邦制のため各州の権限も強く、保守の強いアルバータ州の州首相などは、トランプ関税への対応にすでに懸念を表しており、新政権は課題山積みでの船出となりそうだ。

注:トロント・スター記事”Ontario report warns ‘modest recession’ could be sparked by Donald Trump’s tariffs