ビバ、15周年!

文・斎藤文栄 

2011年10月に始まった本サイト、「The Group of 8」が今年で15年を迎える。

私自身は、結成当初のメンバーではなく、2012年にサンダース宮松敬子さんに誘われて参加した。当時の私は、カナダ人のパートナーと暮らすために永住権を得て、カナダに来たばかり。カナダですぐ仕事を見つけられる程のスキルも英語力もなく、何をしたらよいものか毎日模索する日々を送っていた。

実は、敬子さんのことは、カナダ行きが決まる前から密かに存じ上げていた。家の近所の大学の図書館でたまたま『カナダのセクシュアル・マイノリティたちー人権を求め続けて』(教育史料出版会、2005年4月)という本を見つけて読んだことがあったからだ。以前、米国の大学院で女性学を学んだ際LGBTQ+に関する人権や法律についても学び、それ以降、常にセクシュアル・マイノリティに関心を持ち続けてきた。当時日本では、まだ単行本一冊丸々、海外のLGBTQについて取り上げて出版された本が少なく、こういうことをカナダで取材して書く人がいるのだと、感心して手に取って読んでみたのがきっかけだ。

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トロントに来て、日本食レストランに置いてあった日本語の情報誌でたまたま敬子さんが執筆した記事を読み、ぜひお会いしてみたくなり、編集部に敬子さんをご紹介してもらえないかEメールを送ってみた。まもなく敬子さんが快くお返事を下さり、一度お会いしませんかということになった。見知らぬ人からのメールを無視せず、時間をやりくりして会って下さった彼女の懐の深さに感謝せずにはいられない。

先月のことでもよく覚えていないほど記憶力に自信のない私だが、10数年前、トロントのイートンセンターで敬子さんとお会いしたことは、とても印象深く覚えている。緊張していた私に、敬子さんがフレンドリーな笑顔とはっきりした声で、ご自身のお仕事のことやG8のことを話し、誘ってくれた。人との出会いに飢えていた私は、一も二もなく、G8に参加することを了承した。

実は、カナダで知り合いがほしいといって敬子さんに連絡したものの、その後、私はカナダに定住することなく、英国に2度、日本には長期で数度、マレーシアやネパール、最近では西アフリカのコートジボワールにそれぞれ数年というように、カナダ人のパートナーとあちこち共に渡り歩いてきた。ただ、その間も、G8の記事は書き続けてきた。地球のどこにいてもG8の記事を読むことでカナダの現在(いま)を知り、素晴らしいG8の仲間たちの考察を読んでそれぞれの人生に思いを馳せた。

G8の記事は、本当に多様で、政治、歴史的考察、医療や福祉、教育、スポーツから見る社会的課題、異文化、子育て体験記、書評などなど。執筆者がその時に書きたいものを書いているため、たまに取り上げる内容が重なることもある。似たもの同士なところがある私たちは、関心事も似ているためだ。それはそれで違った視点を見比べることができ面白くもある。似ているといっても、執筆者は様々。日本人だけではなく、カナダ人もいる。結婚してカナダにきた人もいれば、大学に来てそのまま就職していついてしまった人もいる。当初の執筆者からメンバーは変わっているが、人数は常に8人前後を保ち、今に至るまで、ゆるやかなネットワークとして継続してきた。

いつしか、G8は、私の大切な一部となっていった。たぶん、いまG8で執筆している人たちも同じ思いを共有しているのではないだろうか。(そうだったらいいと思う)

カナダのトロントを中心に始まった「The Group of 8」は、15年経ち、時空的な広がりを広げつつ、これからも存在していくことだろう。このサイトを通して、記事を読んで下さる皆さんが何かを感じ、いつしか、みなさんの中にもG8が一部として残ってくれたらと願っている。

トロントの飲茶レストランにて(2025年8月9日)