カナダが移民にやさしいって本当? by 空野優子 (2012年7月)

「カナダってどんな国 ?」と聞かれて、カナダ人(特にカナダを代表する政治家など)がよく口にするのは、「多様性を大切にする、移民・難民にやさしい人道的な国」という国際協調のスローガンのようなお国 自慢である。

さて、果たしてこのお国自慢、どこまで正しいと言えるのだろうか。

トロントにあるチャイナタウン

たしかに、カナダは年間25万人もの移民を受け入れている。永住権をもっていれば、日本の国籍にあたる市民権も、比較的容易に取れる。毎年約2万5000人認定される難民の数も、日本の数十人に比べると桁外れに多い。

一方、統計には表れにくいものの 、最近のカナダの移民・難民受け入れ政策は、この寛大な国のイメージと逆の方向に進んでいるように思われる。近年の傾向として以下のような点があげられる。

1.経済移民を重視していること。特にお金持ちや、すでにカナダで仕事を持っている人たちは、政府に負担をかけない優等生として、移民審査の際にも優遇されている。逆に、家族呼び寄せでやってくる人たち(すでに移住している人の子ども、親など)が認められる条件は、年々厳しくなっている。この春には、求められる英語力のレベルも大幅に引き上げられた 。

2.関連して、国内に何十万人とも言われる滞在資格なくカナダに住んでいる人の多くは、学歴、職歴などにおいて移民審査の条件を満たせない場合が多く、何年住んでも正規の滞在資格を取ることが難しい。同時に、農業などの分野では労働力不足を補うために、短期労働者の受け入れは積極的に行っており、一般に教育水準の高い人は永住移民として受け入れ、そうでない人は短期の単純労働者と、二分化の傾向が強まっている。

3.移民支援関連の補助金の削減。

難民政策転換を批判するトロントスターの記事。写真は移民省長官。

4.難民の審査条件の厳格化、受け入れ支援の削減。

特にこの最後の点、難民受け入れ政策の見直しは、昨夏過半数をとった保守党にとって、主要課題の一つである。(難民のフリをしてやってくる、と保守派が考える)「ニセ難民(bogus refugees)」による制度の悪用と税金の無駄遣いをなくすべしと目標を掲げた連邦政府は、この夏、それまでの難民政策を抜本的に変える改革を相次いで進めた。6月には、その名も「カナダの移民制度を守る法律C-31」を議会で成立させ、また今まで難民申請者が利用することができた医療保険制度(IFHP)の大幅削減も決定した。

つまり、最近のカナダは、「お金があって、高学歴で、そして英語ができる」移民を温かく迎える国となりつつある。

ただ、それでも感心させられるのは、移民政策に対するメディア、一般市民の関心の高さと保守化の動きへの反対運動の強さである。これら一連の政策転換に対しては、数多くの移民・難民支援団体、人権擁護団体、医療機関、教育機関、はたまた一部の州政府までが反対を掲げ、抗議広告、デモ、請願書キャンペーンなど様々な運動が続けられている。

この中でよく聞かれるのは「カナダは外に開かれた、特にもっとも困難な状況にいる人たちに手を差しのべることのできる国であるべき」という人道主義にのっとった国家感である。つまり、多くのカナダ人にとって、移民政策と国のあるべき姿というのは切っても切れない関係にある。

カナダの移民政策は日本が将来のモデルにしている一つだという。今後この国がどういう道を歩んでいくのか見守っていきたい。

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