ベースボール・マム繁盛記 高校野球とU18 Baseball

文・鈴木典子

2017年9月、カナダ・オンタリオ州の北端の街サンダーベイには、世界各国の高校生が集い、第28回WBSC U-18ワールドカップ(注1)という硬式野球の高校生世界大会が開催された。2年前の同じ時期には、第27回大会が日本で初めて、甲子園で行われている。2015年に高校1年生で日本代表チーム入りした清宮幸太郎君が、高3の最後のシーズンではチームのキャプテンとして活躍したほか、甲子園や地方大会で好成績を残した20人が、米国をはじめとした11か国と、高校生世界一を目指して戦った。

この大会は隔年開催され、出場できる国は、前年の地域大会(日本の場合アジア大会)で優勝しなければならない。日本は大会の日程が甲子園大会と重なっていたことやアジア大会で優勝できなかったことから、連続しての出場は2012年以降だ。かつては「18歳未満」ということで社会人野球の選手も選ばれたことがあるが、現在の日本代表は全て高校野球部に所属し、ごく一部のドラフト対象選手を除いて、原則として春夏の高校野球大会に出場したチームから選ばれる。

日本代表チームが最初にチームとして活動を開始したのは、大会開始の10日前、8月22日の国内合宿。6月に候補選手30人が選ばれるが、直前の春・夏の甲子園大会等の成績からの選抜されるだけで、合宿などは行われない。全員が8月の甲子園を目指している真っ最中だからだ。最終代表選手の発表が8月20日で、22日の段階では、夏の高校野球甲子園大会決勝(23日)に進出した広陵高校と花咲徳栄高校から選ばれた2人はまだ合流していない。20人の代表選手は22日から28日までの1週間の合宿で一つのチームとなり、9月1日から最長で11日までの大会を終えると解散し、それぞれの高校に戻る。一人一人は優れた選手だが、サイン、連携プレーなどにしても、1週間で代表チームとしてベストを尽くせるようになるのには、相当の苦労が伴うだろう。また、監督、コーチは、元または現役の高校の指導者だ。対戦経験を通して知っている選手もいるだろうが、他の学校の選手の個性と能力を短期間で把握して、自分の高校の選手と差別なく起用するのは、大変なことだろうと思う。

日本代表の結果は前回の第27回大会が米国に次いで優勝、今年は米国、韓国に次いで3位に終わった。上記のように「即席チーム」であること、中学までは軟式野球が主流であること、高校では金属バットを使っているのに大会では木製バットを使用すること、多くの選手が甲子園大会をピークに据えて練習してきた直後であること、1戦必勝のトーナメントではなくリーグ戦を戦い、タイブレーク制(注2)などの慣れないルールがあることなどを考えると、すばらしい成績を上げているといえる。

ほかの国については調べていないが、米国やカナダでは、州大会、全国大会などの成績で選ばれた100人以上の選手(4チーム分)が春からキャンプに参加し、初夏に2チーム分に絞られて選抜大会を戦い、最終的に30人の選手が選ばれる、といった過程を経て代表チームが構成される。代表チームの監督・コーチは大学の指導者が多く、選抜の段階から選手を見ている。広大な国土に散らばる膨大な人数の選手がいるが、U12(12歳未満)からナショナルチームがあるし、もちろん入れ替わりはあるものの、州代表チームで全国大会に出場している選手が多いので、優れた選手は若いころから様々な大会で顔を合わせる。各年代の代表チームや合宿で一緒にプレーする機会も多いし、多くの選手がメジャーリーグのドラフトにかかること、米国の有力な大学で野球をすることを目指しているので、各地で開催される大学やMLBのトライアウト(選抜試験)やキャンプでもお互いのことを知りえる。さらに、これらの大会やトライアウトは、多くが試合形式なので、その場で編成されたチームでお互いに自分の力を発揮し、チームメイトの力を最大限に活かすことには、慣れている。もちろん、小学校にあがる前から野球といえば硬球で、15、6歳からは公式戦は木製バットだ。

所属する高校野球部の中だけでプレーし、甲子園で優勝することを最大の目標として来ている日本の高校野球。国体でさえ高校野球部の単位での参加である。中学以前に硬式野球をする場合も、リトルリーグなどのチームに所属し、国際大会に出場する場合もチーム単位であって、チームの枠を超えた「県代表」「国代表」のチームを組織することは非常に稀なのではないだろうか。

一人一人の選手がその時のベストメンバーでチームを構成して、国や地域を代表して戦うという、ワールド・ベースボールの方法は、日本の高校野球の体系にはそぐわない。U18の大会での活躍を「侍ジャパン」として注目し期待するのは悪くないが、オリンピックやWBCなどのように、優勝=世界一を選手たちに求めるのは無理が多いと思う。幸いというべきか、歴史が浅いこともあり、比較的ひっそりと開催される大会なので、出場した選手にとって貴重な経験として糧になってくれればと願う。

(注1)World Baseball Softball Confederation(世界野球ソフトボール連盟)主催Under 18(18歳未満)の国際大会。

https://www.facebook.com/thunderbay2017/

http://www.japan-baseball.jp/jp/team/18u/

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