やっぱり不思議な国、日本

文・広瀬直子 

25年以上カナダに住み、日本にリターン永住してから3年半になる。長年、海外で過ごしたために日本に戻って「逆カルチャーショック」を受けているかどうかは、コロナで社会生活が減ったためによくわからない、と以前の記事に書いた。

しかし今、ふたつの理由で私はめまいがするほど、ある意味の「カルチャーショック」を受けている。ひとつは自民党と旧統一教会の癒着、もうひとつは参議院議員のガーシーさんだ。

自民党、そしてカルトである旧統一教会の間に不穏な癒着が長年続いてきたことは、7月の安倍元首相襲撃事件がきっかけで取り沙汰され始め、多数の弁護士、学者、(最近では大手も含む過半数の)報道機関が指摘していることから疑いの余地がなくなった。

(ちなみに、英語では cult が反社会的な新興宗教、sect は単に「宗派」の意味)

日本は、結婚する時夫婦別姓にできないし、事実婚やLGBTQのカップルは法律婚をする男女に比べて権利が少ないし、カナダから見れば、ずいぶんとウルトラ保守的なところがあると思っていたら、統一教会が権力に侵食していたとわかって、長年の謎が解けたのではある。

私は主に自民党の、特にオッサンたちは、なんだか顔つきが変だと常々感じていたがそれは統一教会の影響だったか。「今となっては何とでも言える」とツっこまれるかもしれないが、私は自身で覚えているだけでも10年以上は前から、彼らは「死んだ魚のような目をしている」と家族や友人に言っていた。「東アジア人は目が小さいから考えていることがわかりにくいんじゃない?」と在カナダ日本人の友だちが言ったことがあるが、同じく東アジア人であるBTSのメンバーの目は優しくてキラキラ輝いているではないか。

ともかく、旧統一教会が、心に隙間ができた人を洗脳して最後の一円まで吸い尽くす手口を読んで私は吐き気がしたし、自民党の政治家がそんなカルトと手を結んで権力を維持してきたなんて、その醜さに唖然としている。

私にカルチャーショックを与えているもうひとつは、参議院議員である「ガーシー」こと、東谷義和さんだ。彼の手記『死なばもろとも』(幻冬社)を、怖いもの見たさでダウンロードしてしまい、読んだ。有名人のプライバシーの暴露本だと聞いていたので、紙の本だったら、物質として部屋に置くと誰かに見つかったら恥ずかしいかも しれないのでおそらく買わなかったが、電子書籍なので、夏休みで時間があることもあり、ゴシップの渦を覗いてみたくなった。

読後感想。ガーシーはなんて激しい人だろう、というのと槍玉に挙げられた有名人は大変だな、というもの。ガーシーが大阪の阪南大学の1年生の時、私は京都の同志社女子大学の4年生だったので関西での大学生時代がかぶる。彼が当時サークルの仲間たちと女子大生をどうやってひっかけていたか、という話などは、ミソジニーさに腹が立つ一方で、声を上げて笑う自分もいた。

私がショックを受けているのは、詐欺の疑いで逮捕されることを恐れて日本外に逃亡中の彼が参議院議員に当選したことだ。

カナダでももちろん恐ろしいことや怪奇的なことは発生する。このサイトでサンダース宮松敬子さんが書いてきた、カトリックの寮制学校で起きた、指導者による先住民の子供に対する虐待などは、カナダの負の歴史のおぞましい一面だ。しかし、私がカナダと関わってきたこの30年間は、私見であるが、その質や規模において、自民党/統一教会そしてガーシー現象に匹敵する「ドロドロ」さがあったり、不可解であったりするニュースはなかったと思う。

私には、今のカナダが日本に比べるとずいぶん爽やかでクリーンな国に見えている。私はそんな場所に長年住んでいたので、世間知らずのナイーブなおばさんになったのか。いや、ショックを受けているのは、カナダに長く住んでいた人だけでなく、ずっと日本に住んできた日本人も同じだろう。「そんなもんだよ」なんて思う人はいないと思いたい。

ところで、今のカナダを「クリーンな国」だと言うけれど、お隣のアメリカ合衆国はどうなんですか、という読者が持っておられるかもしれない疑問は、私自身も持っている。しかし、これはまた別の膨大なハナシなので、ここでは触れない。

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