カナダの大学進学事情
文・空野優子
6月はカナダでは卒業式シーズンだ。私の勤めるトロント市内に位置するヨーク大学でも、先月各学部の卒業式が行われた。カナダやアメリカでは、日本と比べ「入学より卒業するのが難しい」とよく言われる。それは必要な単位を取るには授業に出席し、相当の継続した努力が求められるからだ。4年間頑張ってきた分、卒業式は晴れの舞台だ。少なくともトロント地域では6月になってやっと暖かさも増し、木々の緑が鮮やかになる。季節的にも日本の春の卒業式を思わせる雰囲気がある。
さて、大学進学は日本でもカナダでも重要な将来の選択の時だが、カナダでは進学希望者はどのように大学を選んでいるのだろう。また大学側は、どのように大学進学希望者のニーズに応えているのだろう。大学で学生サポートに関わっている1人として最近の動向を紹介したい。
まず、カナダには日本のような入試はなく、高校の成績を含めた書類選考で合否が決まる。オンタリオ州の大学に進学を目指す場合、OUACと呼ばれる共通出願ポータルを利用して、州内のほぼ全ての大学に出願することができる。志望順位をつけながら複数の大学・学科を選ぶことができ、とても効率の良い制度となっている。
大学を選ぶには、毎年秋にトロントで開催され、各大学が一堂に集まるOntario University Fairに参加する方法がある。私も毎年これらのイベントにサポートスタッフとして参加しているが、各大学・学部の強みなどがわかる良い機会だと感じる。また興味のある大学のオープンキャンパスに足を運ぶことができれば、実際の大学の雰囲気が味わえ、教授や在校生とも話ができるので良い機会だ。
ちなみに私の勤めるヨーク大学のグレンドンキャンパスは、英語・フランス語を公用語とするバイリンガル教育が特徴である。心理学、国際ビジネス、教育学などのプログラム、将来フランス語の教師を目指す生徒に特に人気がある。一方、就職の面で有利とされ、一定期間企業などで働きながら単位を取得するCo-op制度のある学科や、昨今人気の理工系の学科は限られている。
もちろん、大学選びは学びたい分野だけで決まるものではない。通学のしやすさ(実家から通う予定であれば通学時間など)、キャンパスの雰囲気、また奨学金の有無やその他費用なども大きな要素だ。ヨーク大学の例で言えば、主要な学部のそろっているキールキャンパスは地下鉄に直結していて通いやすく、5万人ほどの学生が在籍し、設備も整っている一方、グレンドンは緑豊かなキャンパスで、小規模のアットホームな雰囲気が気に入って進学先に選ぶ人も多い。
こうした話を書きながら、自分自身の進学を思い出した。私が25年前に進学したアメリカのノックスカレッジも小規模なリベラルアーツカレッジと呼ばれる種の大学だった。私がここに決めたのは、英語力に自信がない中で留学を目指すなら、大規模な大学よりも小さめの大学の方が良いとのアドバイスをもらったのがきっかけだ。実際、特に最初の2年間は不慣れなこと続きだったので、少人数クラスで教授との距離が近く、周りのサポートがしっかりしている大学を選択して、本当に正解だった。
近年は、高校卒業後の進路も以前より多様になっている。以前グリフィス氏が紹介していたように、大学卒業後、ギャップイヤーとして一年働いたり、旅行したりしながら、自分の将来を考える時間を持つ若者も増えている。また、大学を卒業すれば良い職につけるという社会ではない今では、継続的に需要があり、収入の面でも魅力的な電気工、水道工などの技術職も将来性のある選択肢となっている。
多くの人にとって、大学は人生で一度だけ通う場所であり、進路によって将来の方向性が大きく左右される重要な選択でもある。卒業生の今後の成功を祈り、また9月に迎える新入生のことを考えながら新学期の準備をする今日この頃である。
