北米で最大のバイクラリー: Friends for Life
文・三船純子
斎藤文栄さんがボランティアの勧めの記事でジャパニーズ・ソーシャル・サービスのチャリティーウォークについて書かれていたが、今回は、バイクラリーとも呼ばれる募金活動を目的とした自転車によるサイクリングイベントについて紹介したい。チャリティーイベントのひとつであるバイクラリーは、複数のチェックポイントを回りながらゴールを目指す、自転車の長距離ライドである。
今回ご紹介したいのは、トロントからモントリオールまで600キロメートルを6日間かけて走るFriends for Life Bike Rally (以下FFLバイクラリー https://bikerally.org/ )というイベントだ。毎年8月初旬に開催されるこのイベントに義理の息子二人が参加し、夫と私は最後の4日間、サイクリング参加者の行程に合わせて、車で旅をするという機会に恵まれた。

トロント市長であるオリビア・チャウも参加した開会式では、参加者とその友人や家族などが雨模様の中トロントダウンタウンの東南部に集まった。6日間のラリー全行程への参加者は元トロント市議会議員で現州議会議員のクリスティン・ウォンタムを含む261名。3日目のキングストンから300キロメートルのラリーに参加するのは13名。他にも1日だけ参加した人も4名いた。ちなみに息子の一人は600キロメートルの全行程を、もう一人の息子は300キロメートルの参加である。
さて、クルー・メンバーと呼ばれるボランティアは総勢105名で、サイクリング参加者の6日間のサポートを務める。クルー・メンバーは、バイクラリーが開始される数ヶ月前から週末に実施されるトレーニングのサポートも行う。大会開催中は、参加者の応援をはじめ、怪我などで中断せざるを得なくなった者のサポートや、1日100キロの走行経路に予め細かいマーキングも施す。息子達の母親もボランティアとして参加したのだが、ボランティアには多大な労力と責任が課せられており、かなり大変そうだった。このイベントは全てボランティアで運営管理されている。
参加者とボランティアは、キングストンでクイーン大学の寮に宿泊した以外は、その日のゴール地点のキャンプ場でテントを張っての宿泊である。参加者はそれぞれ収納ケース一つに6日間の荷物やテントをまとめ、そのケースは12に分かれた参加グループ毎に移動トラックで次の到着地点まで移動する。行程は天気に恵まれず、初日はスタート前から雨が降り出し、大雨の中を走行してそのまま大雨の中のテント泊だった。
食事やサイクリング中のスナックなどは、ケータリング会社が全て供給する。緊急時対応医療チームも同行し、路上での緊急対応のサービスを提供する。またカイロプラクター、マッサージセラピスト、学生インターンからなるウェルネスチームも献身的なボランティアで、休憩所や宿泊場所に常駐するので、参加者はサイクリングによる怪我の治療を受け、疲労回復と怪我予防に努めることもできるのだ。
今年はボランティアを含め総勢383名が参加し、総額1,926,677ドルの募金が集められた。1999年に24名の参加者で始まったこのイベントは、これまでに3000万ドル以上を集めてきた。集まった募金はトロント・ピープル・ウィズ・エイズ財団(PWA https://www.pwatoronto.org/)や、キングストンおよびモントリオールのPWAのパートナー団体の資金として重要な役割を果たしている。PWAは、カナダでHIV/エイズと共に生きる男性や、トランス男性、トランス女性、さらに女性や子どもたちに、直接的な支援サービスを提供する最大規模の団体で、毎年2,500人以上に、30,000件を超えるサービスを提供している。
FFLバイクラリーは、HIV/エイズを取り巻く社会的偏見の撲滅と健康格差の解消を目的としている。ラリー参加者は行程中の特定の区間で赤い服や赤いリボンで走行し、HIV/エイズウイルスに感染した人々や亡くなった人々を追悼する。
FFLバイクラリーの元となっているのは、アメリカのカリフォルニアで1994年に始まったAIDSライドである。その後2002年にAIDS/Life Circleと名称を変え、サンフランシスコからロサンジェルスまで7日間877キロメートルのバイクラリーへと変わっていった。しかし、パンデミック後の参加者の減少と運営コストの上昇の為に、歴史的なバイクラリーは2025年6月に終了することになった。だが、AIDS/Life Circle は、31年間に3億4,900万アメリカドルの寄付金を、サンフランシスコとロサンジェルスのHIV/AIDSサポート団体の為に集め、去年の最終ラリーには2,067名のサイクリストと664名のボランティアが参加し、1,784万アメリカドルを集めた。
AIDS/Life Circleが去年無くなった為、今年のFFLバイクラリーにはアメリカからの参加者も少なからずいたようだ。また何年も続けて参加している参加者も沢山いるのも特徴的だ。「自転車での参加はできなくなったが、イベントへの参加が自分の人生を変えたので今はボランティアとして参加している」と話してくれた人もいた。6日間毎日100キロメートルを自転車で走行しながら到着地を目指し、キャンプサイトでも寝食を共にするこのイベントは、1日限りのイベントとは違い参加者同士の絆が深まるように感じた。私は支援者として参加者に声援を送ったり、キャンプサイトを訪問したりしたが、ボランティアを含めた全ての参加者が結束した大きなコミュニティーとして大移動しているような印象を持った。
参加者は年代もバックグラウンドも様々で、初めて自転車に乗る人から、ベテラン長距離サイクリストまで多岐に渡るようだ。壮年層の参加も多かったようだが、なんと80歳近い参加者もいたそうだ。参加者の多くが、2SLGBTQIA+コミュニティーに属しているか、その支援者であることが、HIV/AIDSの現在まで続く歴史的な影響を反映しているようである。
走行スピードは参加者によって大きく異なり、トップと最終の差は毎日数時間あるが、モントリオール市内のPark La Fontaineにゴールインする際には、一緒にゴールしようとする参加者が列になって最終ゴールラインを切る。大勢の支援者達と共に息子達や参加者を迎えるのは感動的な瞬間であった。
FFLバイクラリー は、身体的なチャレンジを共に乗り越えることで参加者同士がコミュニティーを築きながらHIV/AIDSと共に生きる人々を支援するとても素敵なイベントだと思う。
Friends for Life Bike Rally: https://bikerally.org/
The Toronto People With AIDS Foundation (PWA) : https://www.pwatoronto.org/pwas-friends-for-life-bike-rally/#
Aids Life Cycle: https://www.aidslifecycle.org/